リモートワーク導入企業

国境を超えたオンラインの学校。未来を担う子どもたちが、日本語を忘れないために―オンライン日本語補習校

海外に住む子どもたちが、ビデオチャットを利用して日本にいる講師の授業を受けることができるオンライン日本語補習校。経営者である吉田麻美さんは、アメリカで子育てをしながら補習校を築き上げました。今回、吉田さんが日本に帰国したタイミングでお話しを伺うことができました。

吉田 麻美(Yoshida Mami)
学芸員として都内アートギャラリーに10年間勤務。その後、アメリカ人の夫の転勤を機に渡米。2人の息子(現在小5と中2)の通う現地の日本語補習校でのママ友との出会いから、在住勤務するボーデイングスクールの仕事で得た人脈とノウハウを用い、オンライン上で英語と日本語の補習校を設立・運営する。

オンライン日本語補習校:http://online-hoshuko.com/index.html

 

海外にいても、日本人リモートワーカー講師の授業が受けられる、新しいスタイルの学校

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―オンライン日本語補習校は、どのような学校なのでしょうか。

吉田さん(以下敬称略):両親の仕事の都合により期間限定で海外へ住んでいるお子さんや、海外で永住を決めた日本人のお子さんなどのために、ビデオチャットを使って日本人講師の授業が受けられるようにした学校です。現在はアメリカ、カナダ、香港から生徒が集まっています。「日本に戻った時に学校の勉強についていけるように」とか「親の母国語を継承していきたい」といったお母さん、お父さんの思いが入学のきっかけとなっているようです。小学1年生から中学3年生までのお子さんを対象に募集しており、(オンラインではない)現地の日本語補習校と同様に、日本の教科書を使用して算数と国語の授業を行っています。

―日本を離れても、日本語を我が子にも伝えたいと思う方は多いのですね。オンライン日本語補習校では、どのように授業を行っているのでしょうか。

吉田:講師の方は教員免許を持っていたり塾講師の経験がある日本人の先生たちです。それぞれ、ご自宅や経営している塾でパソコンを用いて授業をしています。「グーグルハングアウト」というビデオチャットツールが教室の役割を果たしていて、最大4人の生徒がグループチャットに参加することにできます。みんなで教科書を音読したり、漢字の練習をしたりするんです。YouTubeの動画を見ながら、日本語の歌を歌うこともありますよ。

週に1回、2時間の授業で日本の子どもたちと同じ内容の学習をするので、家庭学習ができるように宿題も出しています。休んだ子がいると、授業を録画して後で動画を見ることで遅れが出ないようにしています。普通の学校とは違い、親がそばで見守ることができるのもオンラインの良いところではないでしょうか。自分の子の進み具合を確認することもできますし。日本語教育は、お母さんたちの協力無しには続けていくのが難しいことだと思っています。

―吉田さんがオンライン日本語補習校を立ち上げたきっかけについて教えてください。

吉田:オンライン日本語補習校のシステムを作ったのは、実は我が子のためだったんです。私は今、夫と2人の子どもと一緒にアメリカの東海岸に住んでいます。子どもたちは現地の学校に通いながら、週末は日本語を学ぶために日本語の補習校に通っていました。しかし、学校までは車で片道45分かかり、冬は雪が積もるため通学が大きな負担だったのです。そして、小学校4年生くらいになると野球が始まり、週末には試合が入るため補習校との両立が難しくなってきました。アメリカの子どもは、小学校高学年になるとスポーツや音楽を始めるので、ずっと続けてきた日本語の学習を諦める人は多いんです。

そういった状況でしたが、どうしても日本語を諦めたくなかったんです。なんとか、スポーツも日本語も手放さずに済む方法はないかと考え、時間や場所の問題をクリアできるオンラインの補習校を立ち上げることにしました。

 

日本は朝、アメリカは夕方。時差をうまく利用して行われるオンラインの授業

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―吉田さんは、どのように講師や生徒の方をサポートしているのですか?

吉田:講師の方がツールの使い方やオンラインでの授業に慣れるまでは、授業を見守りながら適宜サポートしています。授業はスマホからリアルタイムに見ることができるので、パソコンをいつも持ち歩く必要はありません。あとはApple Watchの通話機能を利用して、オンラインのトラブルがあった時などにはすぐに対応できるようにし、クラスの参加者が困ることがないよう努めています。

本当に、スマホとApple Watchさえあればどこでも仕事ができるんです! 車で移動中にトラブルがあった時は、すぐに車を停めて生徒に連絡を入れます。

―生徒や講師の方とのやり取りで、主に使用しているのはグーグルハングアウトやメールでしょうか?

吉田:そうですね。私が特に便利だなと思っているのは、グーグルカレンダーです。カレンダーに授業の予定を入れて、生徒や講師の方たちと共有しているのですが、なんと、時差をうまく現地の時間に変換してくれるんです! 東海岸の時間で私がスケジュールを入力すると、その人がいる地域の時間になって情報が伝わるんです。

授業の10分前になると参加する人に通知が届くシステムなのですが、そこに貼ってあるリンクを押すだけで、ハングアウトのページに飛べるようになっています。また、グーグルドライブで時間割も共有していますよ。オンライン補習校を始めてから、Googleの機能の便利さに驚きました。

―なるほど。色々な国の人がチャット上で授業をするわけですから、時差もありますよね。これは国をまたいで行うリモートワークならではですね。

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吉田:日本が朝の8時の時、アメリカ東海岸は夜の7時です。授業は、基本的には平日のこの時間帯に行っています。日本の先生たちは午前中、アメリカ圏にいる子どもたちは学校が終わり帰宅している時間なので、これが双方を結びつけやすい時間帯なんですよね。今後はアフリカやヨーロッパ圏にも広げていきたいのですが、時差を考えると「丁度良い時間」が重ならず、そこが難しいところなんです。

―世界中の仲間と一緒に日本語を勉強することは、子どもたちの未来の可能性も広がりそうですね。

吉田:海外にいる子どもたちに日本語を教え、いつか日本にも還元してほしいなあという思いがあります。日本では少子化が問題になっていますが、海外にいる子どもたちの力を借りることができたら、将来の日本の希望になるのではないでしょうか。また、病気や定年を理由に教育現場を離れた教員の方たちが、教師としての能力を活用できる場所となることを願っています。

 

リタイアした先生が、リモートワークで能力を活かせるチャンスを作る

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―吉田さんが補習校を運営していく中で、いちばん大切にしていることは何ですか?

吉田:良い先生を選ぶことです。それですべてが決まりますから。いくら便利なオンラインのツールが発達しても、良い先生は良い先生なんです。それだけは変わりません。言葉の微妙なニュアンスを伝えることは、Googleがどんなに発展してもできないことでしょう。

―先生の人柄や教育力を大切にして、学校づくりをしているのですね。

吉田:アメリカの補習校にいた頃、私は運営委員長という役職についていて、日本語を教えられる先生を探さなければいけませんでした。しかし、アメリカで経験のある日本人の先生を探すのは想像以上に大変! 教員不足のため、生徒の保護者が先生となって教えることもありました。しかし、プロではないので教育の質は求められませんでした。

オンライン補習校の良いところは、日本からベテランの講師を採用できることです。講師の方とは普段は遠隔でやり取りをしていますが、基本的には対面でお話をしてから採用しています。それが叶わない場合でも、ビデオチャットを使って面談をしています。講師の方々は全員が教育のプロであり、自分の教え方のスタイルを持っています。オンライン教育の認知度はまだまだ低いですが、教育の質はアメリカ現地の補習校よりも高い自信があります。

―経験のある日本人の先生から日本語を教わることができるのは、オンラインの学校の良さですね。現在、講師の方の募集はしているのですか?

吉田:実は、今回帰国したのも新たに日本人の先生を探すためなんです。教師としての経験をお持ちで、現在は学校の現場から離れてしまった方がいたら、ぜひオンライン補習校で活躍していただきたいと思っています。パソコンとインターネット環境があればできるリモートワークなので、現場をリタイアされた方にもぜひ活用していただきたいワークスタイルです。

今後は、講師の方をもっと増やし、定期的にハングアウトで会議を行うなど、連携をより深めていく工夫もしていきたいと考えています。

―今後、やっていきたいことなどがありましたら教えてください。

吉田:アメリカの補習校は国の認可を受けると補助金をもらうことができるんです。以前申請したのですが、オンラインの学校は前例がないと言われ、認可をもらうことができませんでした。他の方法があるのかもしれないと思い、現在も模索しています。

オンラインの学校に対する認知はまだまだ低いのが現状です。しかし、オンラインだからこそ質の良い授業ができるという強みがあるのです。そういったオンライン補習校の良さを、もっと知ってもらえたら嬉しいです。

―貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。まだまだオンラインサービスに対する国の認知は低いかもしれませんが、海外に住む親子にとって「日本語を諦めなくても良いんだ!」と希望を持つことができる場所になっているのですね。また、リモーワークをしたい教師経験者の方にとっても、プロの能力が活かせる場だと感じました。次回は、この補習校のリモート講師として実際に授業を行っている部田さんのお話もご紹介する予定です。更新をお楽しみに!

 

この記事の著者:佐藤愛美(Megumi Satou)

保育士とライターのダブルワークを5年間続けた後、フリーライターとしてワークスタイルを確立。女性の生き方、子育て、社会問題等のテーマを中心に執筆している。保育園で連絡帳を書くことも、ライターとして記事を書くことも根本は同じ。「人と向き合い、心に触れる文章」をモットーに事業を展開中。

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