山口豪志さんが考える「リモートワーク3.0」

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大学3年次からリモートワークという働き方で東京や海外のプロジェクトに参画し、リモートワークや女性の働き方を中心に発信し続けているリモートワークマガジン編集長・大﨑が、クックパッド、ランサーズをスケールさせた後、現在はインキュベーション施設のマネージャー、エンジェル投資家、スタートアップのコンサルタントというパラレルキャリアで活躍中の山口豪志さんに「未来の働き方」をテーマにインタビュー。リモートワークとクラウドソーシングの進化の先にある「新たな働き方」について語ってもらいました。

 
ーまず、山口さんがかつてクラウドソーシングサービスに携わっておられた理由から教えてください。これからの働き方として「リモートワーク」を応援したいというお気持ちがあったからでしょうか。

そうですね。私自身、もともと「それぞれの人がそれぞれの才能を生かせる社会にしたい」という考えがあり、リモートワークに大きなポテンシャルを感じていたのは確かです。そして、クラウドソーシングの会社で働いていた時、そこに期待していた⼤きな理由は、このサービスが「個⼈の能⼒/実績を⾒える化」して「その人の可能性を拡げる」ものだったから。

個⼈の知恵や経験を伝えることは難しく、初対⾯の時に相手のことを知る術は限られています。その課題を解決するためには「個⼈の能⼒を⾒える化」することが必要になります。それを実現させてくれたのがクラウドソーシングサービスです。

その先の未来には、こうしたサービスをフル活⽤したリモートワークによって、 「自分の人生の時間を自分で納得して楽しく暮らせる社会」が待っているのではないでしょうか。

 

クラウドソーシングをプラットフォームサービスとするビジネスモデルは、3年後~5年後には無くなっている!?

ーもう少し身近な未来だとどうでしょうか。

 

「3年後のリモートワーカーの働き方」はどうなっていくとお考えですか?

 

現在、兆候的にクラウドソーシングやオンラインアシスタントの注目度が上がってきているとは思いますが、まだまだユーザー的には少ない状況です。それが、単純に利用者が増加していくのか。

 

または、現在日本のクラウドソーシングというとランサーズとクラウドワークス2社のみですが、海外からの競合や日本からの競合が増えていくのか。それともこの2社のみが伸び続けるのでしょうか。

 

実は現在のクラウドソーシングをプラットフォームサービスとする1.0のビジネスモデルは、3年後~5年後には下手したら無くなっている可能性もあるんですね。

なぜなら、いまのクラウドソーシングサービスは、本質的には「仕事をしたい人と仕事を頼みたい人をマッチングするWeb掲示板」に過ぎないからです。こちらもやはり、2.0としてより専門的なものに収斂されていくだろうと思っています。

たとえば、入札情報速報サービス(株式会社うるる運営サービス)のように、クラウドソーシングをコンテンツ制作のエンジンとしながら、サービスの見え方としては情報コンテンツを販売する形もありますよね。「写真や文字情報を動画に編集してくれる」といったように、特定の業務に特化したクラウドソーシングサービスにシフトしていくのではないでしょうか。

ーそこでおたずねしたいのですが、現状のクラウドソーシングやリモートワークの課題としては、まず報酬の単価が低いことがあげられますよね。2.0へのシフトにともない、ここから先どのように進化していけば改善できるのでしょうか?

 

まさしくクラウドソーシングの課題は、サービスがでてきてから「単価が下がる」ということにあります。一番クオリティが高くて早くて安い人の一人勝ちで、あとは全員負けるという環境では、バランス需要が悪くなる。

そこで、労働環境を整備して質を担保し、「そこそこの⼈」でも⼀定の賃⾦で働ける環境を作るのが、Caster のような事業であり、クラウドソーシング的な要素を含⼊した2.0のビジネスモデルです

 

さらなる進化をとげる3.0では、ブランド化したリモートワーカーとブランドチャンネルの融合でハイスペックなサービスが生まれる

ー2.0のビジネスモデルが出てきたとしても、そもそも「人との出会い」が少なくなりがちなリモートワーカーがキャリアアップにつなげていくことってむずかしいですよね。この点については、どのようにお考えですか?

 

そう、この2.0で出てくる課題が、ここで働く⼈同士のコミュニケーションの問題や特定業務以外の仕事が⼊ってくるルートがないという部分になります。

経営側としては、労働組合や協会といった働く⼈たち向けのコミュニティを作り、またスキルアップしてステップアップができる環境や、キャリアパスを作っていく上で次の仕組みを⽤意してあげる必要があると思います。

特定業務で利用企業側からみるとサービスが分かれて見える一方で、働く側からすると様々な業務とキャリアパスが設計されている、それが今後のリモートワーク3.0の形になると思います。

ーリモートワーカー側はどう動いていけば?

 

働く側としては、たとえばオンラインアシスタントであれば、今現在アシスタント業務をやりながら、特に「強い分野」や「やりたい業務」に注目してください。ライティングやリサーチなどなんでもよいのですが、そこの部分を特化していくのです。

リサーチ業務のプロフェッショナル、単価が高くて儲かるラインティング業務、エキスパート秘書など、専門家のプロダクトとサービス、そしてハイクオリティなコストパフォーマンスを持つアシスタントに移行していく形です。

いまの働き方が1.0でプラットホーム、2.0で専門サービスときたら、それ以降の3.0はさらなるハイスペックに進化します。ただ、この最後のフェイズは超難関でかなりのハイレベルでしょうね。

ーそこまでに至るには、きっとすごく時間がかかるのでは…。

 

時間もかかるしでしょうし、あとは3.0の場合は既存のビジネスと混じり合うイメージです。ハイスペックオンラインアシスタントと、ブランドチャンネルなどがくっついていく。たとえば現在、リサーチ業務についてはすでに特化している会社があります。

そうしたブランド化した会社の中に、ブランド化したオンラインアシスタントが入っていって、彼らの専門業務を受けていく。これによって求められるスキルが高まる一方で、単価もどんどん高まっていくでしょう。

実際のところ、すでに知的労働分野においては、大企業が専門に特化したインド人を活用して成功しています。リモートワーカーも時代の流れで、そうした変化を遂げていくと思います。

 

未来は「ひとりで多種多様な業務をやらなければならない」時代

ーそれはもう10年以上先の未来の様子でしょうか。その頃には、社会環境や働き方すべてが大きく変わっているんでしょうね!

 

2025年から⾼齢者数は下降しはじめて、その先に待っている働き⽅は、「ひとりで多種多様な業務をやらなければならない時代」です。

かなり先の未来の予想で⾔えば、整備されたルールの中で運用されている「コンビニエンスストア」や「フランチャイズ」モデルのよ うなものがもっと増えていくと思います。クリーニング屋さんの機能が融合したコンビニはもうありますが、ある特定の業務だけを頼む場所がまとまっていくでしょう。

「コンビニ+クリーニング+チケットショップ」といった形で、スタッフは少ないのに業務過多だから、ひとりの人がいろんなことをやらなければいけない状態になり、利益の取り方も、コンビニ業務10万+クリーニング業務10万+チケットショップ10万といった感じでプロフィットが少しずつ。

このように、ビジネスとしては「マニュアルが整備された多様なパッケージが流通するようになる」というのと、個人の働き方としては「いろんなことをマルチでこなすようになる」

ー次のトレンドは「Uber」とか「Airbnb」と言われていますが、それもそのひとつですか?

 

「Uber」や「Airbnb」の場合、サービスの提供者は本業ではなく副業のひとつとして選択しています。普段余っている「車」や「部屋」が有効活用された上で、自分の時間だけで確保出来る副業です。「車×自分の時間」セットだと、「自分単体×自分の時間」で売るよりも付加価値が高くてお金も高いからこれを選択している、というような。

こうした「自分」×「⚪⚪」でより価値が高くなる業務、さまざまな仕事のかけ算が社会に溢れてきて、それを個人が取捨選択する時代になっていくと思います。

いままでは、たとえばサラリーマンで「⚪⚪会社」×「自分」と考えられていたものが、もっと細分化されていくイメージです。

ー私が新入社員になった場合を例にすると、「大﨑」×「⚪⚪会社」では、部署を普通に人事が采配して割り振ってくれますよね?

 

それが、「⚪⚪会社」の中でも「品川エリアの営業担当」とか「カスタマーサポート」といったように業務がバーッと羅列される中で、「×大崎さん」でよりパフォーマンスが高まる組み合わせの選択が可能になるんです。

また、それを可能とするためにも、より企業ブランドの中身がオープン化されていくようになります。そうしないと、企業としてはひとりひとりをカバーできなくなるし、社会的にもいろんな働き方が登場して自由になることで、企業も軟化していくからです。

当然選択肢が広がりますから、選ぶのが好きな人や明確にやりたい意識がある人は、より暮らしやすくなるでしょうが、反対に、あまりやりたいことがない人や好きなことがない人にとっては「何でも選択する時代」はしんどいかもしれませんね。

 

現在ある職種の大多数が「AI」に仕事を取られてしまう未来はまだ先のこと

ーそれに、細かい選択が必要のないような仕事は、どんどん「ロボット」に取られていくような気がします。

 

そういう視点でいうと「ロボットに取られる」というのは、インターネットサービス⾃体が基本的に全部ヒトの手間を無くすためにありますよね。

インターネットとは何かというと、⼈⼿を介さずに必要としている情報に結び付けることができるものです。インターネットが一般化する前の社会は、電話帳(タウンページ)を引いたり、その領域について知見のある誰かに聞かなければいけなかった事を、検索窓に⼊⼒するだけで『五反田エリアの美味しい焼き肉屋』というような情報が取り出せるようになった訳で。

AIのような⼈⼯知能と⾔うものは、これからの50年や、下⼿したら100年位もの研究と実践の繰り返しで着実に変わっていくという話で、明日から急に変わるわけではないと思います。効率的にはなるでしょうが、一方でそれを開発した会社は開発費を回収するだけの費用を得る為に、最初は高額な費用にするでしょうから。

現在メディアで話題になっているのは、過去の行動履歴を基に研究されている「機会学習」のことをAIと呼んでいるように思います。これは過去に行った事象や他の人が行ったことをすぐに再現して「思考プロセスのスキップをさせてあげている」だけ。

広く捉えると、AI(人工知能)という表現で、過去の行動解析による情報や行動を導きだしていることが多いと思います。

ーAIに出来ることって、これからもっと変わっていくのでしょうか?

 

変わるでしょうね。たとえば「⾚」って具体的にはどんなビジュアルだろう、と 思ったときにグーグルで画像検索すると、⾚いものがバーっと出てきますよね。

でもあれって、今までは⾃分であちこちに調べに⾏ったり、図書館で引くなど時 間をかけなくればわからなかったことを、しなくて良くなったということですよね。

仕事が⼈⼯知能に置き換わるというよりは「仕事を人工知能をつかってより簡単に答えにアクセスできるようになる」というパターンが増えるのであって、完全にAIに仕事を取られるというのはまだ具体的ではありません。

なぜなら、AI というものは「答えがある」ことしかできないからです。基本は 「1+1=2」という表計算。

ですから、左脳的なロジックは代替しやすいでしょうが、右脳的な発想や創造性はやっぱり⼈間じゃないないとできないんですよね。

そもそも人間に取って快いと感じる発想や創造性を人間以外のものが提供できるというのは、人間自体の理解が前提であるわけで。その辺はもうちょっと別なアプローチが必要なのかな、と思っています。

 

「環境適応能力」につながる柔軟性とフレキシブルさがあれば、どんな時代でも生き残れる

ーとはいえ、やはりそのIT化にともない「20年後には今ある職業のうち半分が人の仕事ではなくなる」とも言われています。

 

親御さんにとっては、今の子どもたちの未来の働き方がどうなるのかということも非常に気になるところだろうと思うのですが、そのような未来においても、とにかく働いて生きていける大人になるためにはどのような能力を養っておくべきだと思いますか?

 

そうですね、私にも1歳半の⼦どもがいるのですが、⼤事なのはおそらく3つぐらいだと思います。

そのひとつはより⼈間的な感性で、「愛する⼒と愛される⼒」です。種の保存の原理からも、その種のコミュニティに必要不可⽋な存在だと思われることが⽣き延びることに直結します。具体的には、スキンシップで愛情深く育てるということでしょうか。

2つめに重要だなと思うのは、「⾃分で⾃分のことを理解する⼒」です。いわゆる「物事を考える⼒」と⾔われるようなものですが、⾃分はこれが好きなのかな、好きじゃないのかなということを内⾯に照らし合わせて判断ができるようにしてあげたいですね。

⽇本の伝統芸能には、型を師匠から学び、それを改良・改善して⾃分のオリジナルにしていき、最終的には型そのものを崩して⾃分のものにするという「守破離(しゅはり)」という教えがあります。親の価値観によって⼦どもは形成されていきますから、まずは⾃分たちの考え⽅や価値観をインストールしつつ、彼らがそこから脱⽪してくれるように促していく。基礎の型は教えるんだけど、やがて⾃分⾃⾝の感性や考え⽅で歩めるように、それを壊すためのプロセスも提供しないといけないなと思っています。

そして3つめは、どんな環境でも100%変化していくものですから「変化を受け⼊れる⼒」が不可⽋。私はもともと「昆⾍学」や「⽣物」の勉強をしていたのですが、⽣き残るためには「環境適応能⼒」が圧倒的に必要なんです。これがないと時代と共に滅びるしかありません。

ー周りの木々などの環境の変化を見て、自分が今置かれている状況を理解し判断して、どう動いていくか、ということですね。

 

そう、ふたつ⽬の⼒にもつながることですが、環境変化が⼤前提にある事を理解して動けるかどうかが⼤事ですね。

⼈に⾔われた通りのことをひたすらやり続けるような働き⽅だと、いつかしんどくなるでしょう。

でもそうした「環境適応能⼒」につながる柔軟性があれば、どんな時代でも⽣き残れるんじゃないかな。

私⾃⾝も将来ガチガチな価値観に凝り固まってしまわずに、この先の未来も楽しく働いていられるようにがんばりたいですね。

ー私もがんばります。本日はありがとうございました!
【編集長後記】

今回は、以前【クライアント事例】として山口豪志さんにインタビューさせていただいたときに盛り上がった「ミライの働き方」のテーマについて、こちらのインタビューシリーズでご紹介しました。

クラウドソーシングに深く関わられた山口さんにリモートワークの未来をマクロ的な視点でお伺いすることができ、とても勉強になりました。

これからの10年くらいで働き方に大きな変化が出そうな予感がしています。

次のインタビューも乞うご期待!

 


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by caster-biz