リモートワークでひらめきを! イスラエル企業Wix.comの働き方

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現在、アメリカに次ぐスタートアップ国家として注目を集めるイスラエル。世界に7,800万人のユーザーを抱える無料ホームページ作成サービスを提供するWix.com(ウィックス ドットコム)は、人口第2の都市テルアビブに本社を構え、成長を続けるスタートアップ企業のひとつです。Wix.comのイスラエル本社でマーケティング・マネージャーとして働く田澤潤子(たざわじゅんこ)さんに、その自由な社風やリモートワークを含むフレキシブルな働き方などについてお話をうかがいました!

 

子どもが熱を出したから今日は自宅でリモートワーク

ーWix.com(以下Wix)の創業は2006年と、まだまだ新しい企業ですよね。

田澤さん(以下敬称略):Wixの創設者は3人いるんですが、実は当時彼らはまったく別のIT系スタートアップを立ち上げようとしていたんです。
その自社ホームページの作成をしようとしたときに、「意外に難しいじゃないか」と。彼ら自身もITエンジニアですが、そんな彼らでも自分たちのサービスのウェブサイトを作るのが難しいということに気が付いたんですよね。
「だったらそれ自体がビジネスチャンスだ」、「誰でも簡単にウェブサイトを作れるようなサービスを立ち上げよう」というのがWixの始まりなんです。

Wix people

ーWixは日本語でも提供されていますよね。日本で働いているメンバーもいるのでしょうか?

田澤:いえ、実は日本には拠点はなく、在日本の社員もいないんですよ。Wixは現在15言語で展開しているんですが、全ての言語バージョンともオペレーションはイスラエルから行っています。
クラウドベースのソフトウェアをオンラインで提供する事業なので、開発からマーケティング、サポートまでイスラエルでほぼ完結させているんですね。

ただしサポートに関してはテルアビブのほかにサンフランシスコとマイアミにもコールセンターの拠点があり、ユーザーからの問い合わせなどのカスタマーサポートはこれら3か所で行っています。
日本のユーザーからの問い合わせは、サンフランシスコ支社とテルアビブ本社で勤務している複数の日本人が対応しています。

ーWixではみなさんどのような勤務体系で働いているんですか?

田澤:正社員は基本的にオフィスに勤務することになっていて、私もオフィスで働いていますが、あくまでもそれは前提。概して多様な働き方が認められています。
例えば男性社員でも「今日子どもが熱出しちゃったんで家で仕事します」というケースなど、自宅からのリモートワークが許されている会社ですね。
弊社の勤怠管理システムでは、「病欠」や「休暇」とともに、「自宅勤務」という選択肢があるくらい、リモートでの働き方が普通になっています

ーリモートワークをする場合、会社はどのように管理しているのでしょうか?

田澤:プロジェクトの進捗に応じて、自己にまかされているという感じですね。
勤務時間数はお昼も含めて9時間と設定されていますが、オフィスで勤務する人たちも、残業するのも、すこし早めに退社するのも、本当に個人の裁量に任されています。
リモートで働いている人は、「今日何時から何時までやりました」と申告するだけで終了です。

ー働き方はどんな形でもかまわないから……

田澤:そう、勤務時間の長さより成果が重視されていると言えます。いわゆる欧米流の結果主義、合理主義というところでしょうか。

ーいわゆるノマドワーク的に、外のカフェなどで働いていらっしゃる方もいるんでしょうか?

田澤:それはあまりいないと思いますが、キッチンや庭、テラスなど、オケージョンに応じて社内のいたる所に場所を移して自由に働いている人は多いですね。電話の打ち合わせなどでスマホで大きな声で話しながらうろうろしている社員も大勢いて。
おかげで社内は常に賑やかというか、騒然としているというか、日本で働いていたころのオフィスとはずいぶん違います。静かな環境が好きな私は耳栓をして仕事をすることもあります(笑)。

Wix Roof

 

テルアビブ、サンフランシスコ、日本をつないで働く

ー田澤さんの前職、テルアビブに来ることになった来歴などについておうかがいしてもよいでしょうか?

田澤:私はたまたま結婚した相手がイスラエル人だったことから、移住を決意しました。
私はもともとインドがすごく好きで、大学のときにも留学してインド哲学を学んだりしていたんです。
インドと日本をつなぐ仕事をずっとやりたいと思っていて、日本で日本貿易振興機構(ジェトロ)に入り、日本とインドのビジネスを繋ぐ仕事をして、現地に駐在することにもなりました。
そのときに夫との出会いがあり、結婚が決まって、ジェトロを退職してイスラエルに移住して来た、というわけなんです。約1年半前のことです。

ーイスラエルに移住後も、やはり働きたいという気持ちが強くてWixに就職されたんでしょうか?

田澤:働き続けたいというのは絶対でした。
私はフリーランスよりもフルタイムでという思いがあったので、英語でできて、かつ日本市場向けの仕事ということで探して、縁があってWixと巡り合いました。
ジェトロでは日本企業の海外市場開拓を支援するキャリアを積んできたので、今度は逆の方向、つまり外国企業の日本市場開拓ということで生かせる経験が多くあったこともポイントです。

ー今後お子さんができたとしても、リモートワークに寛大なWixであれば仕事を続けられやすいですよね?

田澤:はい。一定の日数の出勤はやむを得ないと思いますが、リモートワークとオフィスワークをバランスよく組み合わせることで、働き続けたいと考えています。

ー田澤さんの普段の業務内容は?

田澤:SEM(サーチエンジンマーケティング)を中心としたオンラインマーケティングのほか、日本在住のWixのプロモーターの方々との連絡、打ち合わせなどです。あとは、本社に日本人が少ないので、時には「日本に関する業務の何でも屋」になることもあります(笑)。

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ーWixプロモーターの方々とのお仕事とは、具体的にはどういったものになるんですか?

田澤:弊社では、Wixでのホームページ作成のノウハウを熟知し、教えることができるウェブデザイナーの方に、「Wix公認トレーナー」という資格を出しているんです。
こうした公認トレーナーの方々と「いついつWix講座を開きます」「日本のユーザーさんにはこういう機能の需要があります」「生徒さんがWixの使用感についてこういうことを言っていました」などといった情報交換のためのミーティングを定期的にしているんです。

ーその方々とは常に遠隔でやり取りされているわけですよね?

田澤:はい。SkypeやGoogle Hangoutのビデオ通話機能を活用しています。
そのほか、テルアビブと日本をネットでつないで、遠隔でスピーカーとしてWixセミナーに参加したこともあります。
スクリーンに私のSkype画面をつないで会場の皆さんにお話したんですが、返事があるわけでもないし、会場の臨場感も伝わってこないので、あれはすごく変な感じでした(笑)。
今後そういった形の仕事も増えてくるかもしれないですね。

ーサンフランシスコにいる日本人チームとはどうでしょうか?

田澤:サンフランシスコは時差が10時間なので、Skypeなどで頻繁に打ち合わせるのはなかなか難しいんですよね。
月1回の定期的なSkypeミーティングのほかは、基本的には必要に応じてメールやチャットでやり取りをしています。
あとはgoogleドキュメントなどのクラウドツールを用いて進捗状況や各種情報を常に共有できるようにしたりなどでしょうか。

ー遠隔でやり取りをする際に気を付けていることなどはありますか?

田澤:う~ん、実はあんまりないかもしれません。数をこなしていくうちに普通になっちゃったので(笑)。
しいて言うならば、時差に気を付ける、開始時間の少し前にスタンバイして接続状況を確認するなどの普通のことでしょうか。
あとは、iPadをビデオ通話のための端末として使い、パソコン画面では共有ファイルを確認しながら打ち合わせをするなどの工夫はしています。

 

柔軟な働き方はひらめきを生む

Wix Working space_03
ー社内にはいろんな国籍の方がいらっしゃるんでしょうか?

田澤:イスラエルは、世界中に散らばっていたユダヤ人たちが帰還して建国した移民国家です。なので、弊社内で働く社員の出身国も非常に多様なんですよ。
例えば私が在籍するマーケティング部門は、特に各言語スピーカーが必要とされる部門なので、出身国がアメリカ、フランス、ロシア、中南米諸国、というメンバーが大勢います。
イスラエルが移民国家であるからこそ、マーケティングのような多言語業務も国内だけで完結させられるんですよね。

ーなるほど、イスラエルならではのビジネスモデルですよね。でも、社内の共通言語は英語ですよね?

田澤:ミーティングや書類上の社内公用語は英語です。ただしイスラエル人同士だけになるとやはりイスラエルの公用語であるヘブライ語で話していますね。
私はヘブライ語は苦手で、最近やっとなんとなくわかるようになった程度です。もっとやらなきゃとは思ってるんですが、なかなか難しいですね(笑)。

ーテルアビブはスタートアップがさかんな都市として注目されている印象ですが……。

田澤:そうですね。周りはみな常に起業起業と言っていて、そのスピリットはすごくありますね。
イスラエルではサラリーマンとして安定した生活を目指すよりも、スタートアップで一旗あげてお金持ちになりたいという気勢があるんですよ。ハングリー精神というか。
友人との会話でも「いつか起業するんだ」という話題が普通に出たり、一度失敗してもまた起業に挑戦した人の話もよく聞きますね。

ーそのあたりもWixの自由で柔軟な社風の背景になっていたりするんでしょうね。

田澤:アメリカのシリコンバレーと同じものを目指しているところもあると思います。
「ひらめき」が何より大切なんですよね。労働環境にストレスを与えないようにして、リモートワークなども含めフレキシブルに働くことによって、新たなひらめきを促進する社風があるように思います。

これはGoogle社に似た取り組みですが、バランスボールに座ってデスクワークができたり、デスクが電動で高さを変えられる仕様になっていて、その時々の気分に合わせて立って仕事ができるようになっているとか。気分転換のためのピンポン玉のマシンガンみたいなおもちゃが配られたりとか、なんてことも(笑)。

ーそれはなんて楽しい会社(笑)!

田澤:型にはまらずに、できるだけ楽しく仕事をすることで生まれるひらめきを大事にして、そのひらめきを新しいサービスを生むための原動力としていく。Wixはそんな会社ですね。

ーうらやましくなるような環境で日々奮闘する田澤さん。自由で柔軟な働き方からひらめきが生まれるという言葉に深く頷かされました。どうもありがとうございました!


この記事の著者:溝口シュテルツ真帆(Maho Mizoguchi Stelz)

2004年に講談社入社。編集者として、『FRIDAY』『週刊現代』『おとなの週末』各誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。2014年にドイツ・ミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動、日本とドイツ間のリモートワークも実践中。南ドイツの情報サイトam Wochenendeを運営。


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by caster-biz