4足のわらじを履くフリーアナウンサー。あらゆるツールを駆使して働き方を開拓!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2つの一般社団法人の代表理事と事務局長をつとめ、本業はフリーアナウンサー。その華やかな肩書きとは裏腹に、いつもフットワーク軽く、中学1年生の母親業もこなす香月よう子さん。今までインタビューした人数はなんと1万人以上にのぼりますが、インタビュー以外でも人と直接会うことに労を惜みません。常に多くの案件を抱えながら、その時間を捻出するために不可欠なものは「Skype」と「SNS」と「スタバ」!? 4足のわらじを履き続けるための秘訣や「香月流リモートワーク術」を伺いました。

香月よう子(Yoko Katsuki)
フリーアナウンサー。番組パーソナリティーのほか、省庁主催のシンポジウムや話し方などの講演も行う。’02年NPO「きてきて先生プロジェクト」代表に就任、地域、企業、学校をつなぐ教育活動を展開。東京都生涯学習審議委員、中野区次世代育成審議会委員などを歴任。’15年3月、一般社団法人化に伴い代表理事に就任。また、同時に女性のキャリア形成支援を行う一般社団法人「美人化計画」に事務局長に就任。一児の母。ラジオNIKKEI『グローバルヘルスカフェ』出演中。

ホームページ:http://katsukiyoko.com

きてきて先生プロジェクト:http://www.kitesen.org

子宮美人化計画:http://www.shikyubijin.com

 

必要に迫られたどり着いた自己流リモートワーク

KatsukiYokoDJ

―産後2カ月で最初の仕事に復帰してから12年。フリーアナウンサーと母親業の2足のわらじで駆け抜けてきた香月さんが一般社団法人「きてきて先生プロジェクト」代表理事と「美人化計画」事務局長に就任したのは2015年春。2足のわらじから4足のわらじへとその活躍の場を倍増させました。

香月さん(以下敬称略):私にとっては、4足のわらじというよりも、根っこは1つなんです。「香月ホールディングス」でやろうとしていることを実現するためには、4つのカンパニーが必要だったというか(笑)。私がずっとライフワークにしてきた「人に光をあてて、育てて、発信していく」こと、そのための手段がどんどん増えてきた感じですね。

―そんな香月さんが打ち合わせや待ち合わせで使用することが多いのが、スターバックスコーヒーか、渋谷のどこか。その理由を尋ねてみると……

香月:理由は簡単、スタバには必ずWi-Fiがあるから(笑)。とにかくどの街でもスタバを探してますし、だいたい知ってます。基本的にはアポとアポの隙間時間や打ち合わせは、Wi-Fiがある店以外に入ることはほとんどないですね。打ち合わせすることの多い渋谷では、どこにWi-Fiが入っているか頭にすべて入っています。

―言われてみれば、スタバにはいつもパソコンで仕事をしているリモートワーカー風の人が少なくありません。香月さん自身も、とにかく人と会うことが多いので、外出先やアポイントの合間にもメールの返信や資料作りなど、できることは済ませてしまいたいんだそう。

香月:でも、リモートワークっていう概念では働いていないんです。そもそも今回の取材を受けるまで「リモートワーク」っていう言葉を知らなかったし(苦笑)。とにかく出かけることが多いので、必要に迫られて今の働き方にたどり着いた感じです。

―そんな「人と会う」ことがライフワークとなっている香月さんの原点は、フリーアナウンサーへの転身時にありました。もともと大学卒業後、大手百貨店に就職した香月さんがアナウンサーに転身したのは26歳のとき。しかも、バブル崩壊後にいきなり最初からフリーランスでキャリアをスタートさせたというから驚きです。

香月:もともと高校でも放送部に所属していたし、大学でもアナウンス研究会に在籍していたんです。漠然としゃべりたいとは思っていましたが、なり方もよくわからなかったし、ちゃんと調べるほどの執念もなかった(苦笑)。それで百貨店に入社したんですけど、そこで顧客向けのファッションショーの司会に抜擢されたんです。プロダクションからプロのモデルさんをちゃんと呼ぶようなしっかりした企画だったんですが、自分の言葉とともに、女性たちがキラキラと颯爽と歩く、その世界観を伝える仕事に感動してしまって。しかも、そのプロダクションの社長さんから「君、うまいね!いいよ!!」と言われたものだから、真に受けて、会社を辞めて、アナウンスの学校に入っちゃった(笑)。人に光をあてて、世に送り出す仕事に魅了されてしまったんです。

―そのあとの道は必ずしも順風満帆ではなかったそうですが、いつも人との出会いが香月さんを救ってくれたといいます。

香月:アナウンス学校を出るころにはバブルも終わっていたので、とにかく仕事がない。今みたいにネットもなければ、情報もないから、直接電話して営業したり、オーディションを受けたりしては、玉砕を繰り返していました。局アナの経験がない時点で門前払いが当たり前。ある日、「履歴書を送って」と言われた会社の社長さんのところに、いてもたってもいられなくて会いに行ったんです。そこで直接お話して、自分のことを知ってもらって、そこからFM東京の番組が決まった。だから、私にとって人に会うことは何よりも大切なことなんです。

 

10 年経っても変わらない「このままでは両立できない!」

katsuki_kitekite

―人と会うためにはどこにでも赴き、自分で道を切り開いてきたという香月さん。地道にアナウンサーとしてのキャリアを積んできた香月さんが、畑違いとも思える教育業界に足を踏み入れたのは、ある社会問題がきっかけ。それは今も昔も変わらない女性の働き方への焦りが根底にありました。

香月:一般社団法人「きてきて先生プロジェクト」が設立したのは2015年春ですが、もともと「きてきて先生プロジェクト」は’01年からNPOとして活動していて、私は’02年から代表として活動していました。

「きてきて先生プロジェクト」は一芸に秀でた社会人講師を学校に派遣しようという取り組み。日本を代表する著名人が母校を訪問して課外授業を行っていたNHKのドキュメンタリー番組『課外授業 ようこそ先輩』を想像していただけるとわかりやすいかと思います。今までに1000組以上の外部講師と子どもたちの出会いを作ってきました。

私が教育業界に足を踏み入れたきっかけは、2000年から段階的に取り入れられた総合学習の授業ができたとき。いわゆる、ゆとり教育です。そのときの私は、まだ子どももいないどころか、結婚もしていなかったんですけど(笑)、なぜか「今のままでは教育がまずい!」と感じた。当時、男女共同参画ブームでもあって、この問題を解決しないと「仕事と育児の両立はできない」って思ったんですよね。

でも皮肉なもんですよね。歴史は繰り返されるというか、結局今も「仕事と育児の両立」とか言ってるじゃないですか。10年活動しても、何にも変わっていないんですよ。

10年の間に東京都や中野区の委員をやったり、学校地域連携に携わったりしましたが、本当に理想としていたものとは違っていたんです。しかも、この10年間関わっているメンバーも変わらないから、平均年齢が10歳上がっただけ。私は今、都内でいちばん若い校長先生と同い年なんです。

結局片手間でやっているうちは、何も変えることができなかった。そして、若い人たちにもっと活躍してもらいたいから世代交代も必要。だから本気で関わらないといけないと思ったんです。そこから一般社団法人化に向けて動き出しました。

―「きてきて先生プロジェクト」とまったく同じ日に「美人化計画」も設立。こちらの代表を務めるのは、以前、香月さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組にゲスト出演した産婦人科医の桜井明弘先生です。

香月:同じ日に設立した方が手続きが楽だったから、同じ日にしただけなんですけど(笑)。もともと代表の桜井は3万人を超える不妊患者さんの治療をしていました。治療の中で数えきれないほど、泣き崩れる女性たちをみてきて、「もっと早く治療していれば、その手に赤ちゃんを抱かせてあげられたのに」と、日々思ってきたそうです。そんな現場に身を置きながら、医療の壁で乗り越えられないものがあることを痛感し、誕生したのが「子宮美人化計画プロジェクト」です。極論をいってしまえば、不妊治療にこなくてもいいようになればいい。女性たちは自分の体のことなのに、知らないことが多すぎるんです。だから女性のキャリアプランも含めて啓蒙していく活動が必要不可欠。これを日本全国に広めたいなら、本気でやる。仲良しグループなら、やる気はないと代表にも伝え、一緒に立ち上げることになりました。

実際に、教育プログラムを作ったり、今まで関わってきた教育業界とリンクすることも大きいですし、まさに「きてきて先生プロジェクト」と「美人化計画」、双子を産んだ感じです。

外出先と自宅で、ありとあらゆるツールを駆使

katsukiyoko_cafe

―一度でも香月さんに会ったことがある人なら誰でも、とにかくそのバイタリティーとフットワークの軽さに脱帽すると思いますが、2つの社団法人に本気で取り組むとなると、その働き方にもかなり工夫が必要になるはず……。そんな香月さん流リモートワークスタイルを支えているのは、ITツールの数々でした。

香月:とにかく、ありとあらゆるツールを使ってやりとりをしていますね。サイボウズにDropbox、SkypeにFacebook。もちろんメールや電話も。「美人化計画」は医師やセラピストの方など、なかなか一堂に会することができないため、とにかくいろいろな方法を使っています。全員のやりとりはサイボウズ、代表や事務局とは書類のやりとりも多いので更新が楽なDropbox。時間を短縮するために、打ち合わせはSkypeで、と。

とにかく使えるものはすべて使わないと、時間はいくらあっても足りません。便利なものを人から教えてもらっては取り入れています。

「きてきて先生」の方は、Facebookのクローズのグループでやりとりすることが多いですね。すべて情報を投下すればいいので、個人的にはFacebookでのやりとりがいちばん楽で気に入っています。

ちなみに、教育業界のやりとりは未だにFAXというのも多いんですよ! 驚きですよね。

―使用するツールが多くて、より混乱をきたしそうな気がしますが、それぞれの特性を知ればそうでもないんだとか。

香月:私自身、混乱することもありますよ(笑)。でもそれぞれのツールのよいところを生かして使い分けるしかありません。

たとえば、Dropboxは誰でも使える、いわゆる共有サーバー。その中で書類を更新すればいつでも最新の状態のものを見ることができます。会社でも資料を共有するときでも「どれが最新なの?」と、わからなくなったりするじゃないですか。それがDropboxを共通で使用することでなくなるんです。

サイボウズで掲示板的に連絡事項を共有して、そこに「Dropboxにアップしました」と一文入れればいいだけですから。

Skypeは、医師や看護師さんなどと一緒にやりとりする「美人化計画」では非常に便利ですね。もちろん、これはカフェなどでは無理ですから、使用するのは夜に自宅で。そうなると化粧もしていないオフ状態なので、カメラを起動させてのビデオ会議になることは決してありません(笑)。

ママ友たちとのSNSにもきっちりポリシー

―またお稽古事でロボット教室に通う中学1年生の息子さんに関しても、かなりの時間を割いている香月さん。そこにも独自のポリシーがありました。

香月:ロボット教室はお稽古事ではあるんですが、世界大会を目指して本気で取り組んでいるので、親たちが一丸とならないといけないんです。ただ親御さんや先生たちとのやりとりは、また仕事と違ってテクニックが必要なんですよね。過去に常設のLINEグループがあったのですが、本来の目的と違う内容も多かったので(笑)、勝手に脱退しちゃったんです。そしたら、これが大きな波紋を呼びまして……。

―SNSを使ったトラブルやわずわらしさを耳にすることは多いですが、香月さんが取った行動はなんとも明快かつ爽快。

香月:子どものために最大限のバックアップはするけれど、それ以外に関わって消耗する時間も体力もないんです。昔から仲良しグループとかが苦手だったのもあると思うんですけど、仕事と両立させる上ではっきりさせるべきところははっきりさせないと。私が脱退したときはびっくりされましたけど、ありがたいことにそんな私のワガママを理解してくれまして。日常用のLINEグループはなくなり、大会前にだけ作られるようになりました。ちゃんと効率的かつ効果のある形に落ち着きましたよ。

―「親でも、知り合いでも、使えるものはすべて使った」「雪の中、保育園までヒールでダッシュした」と、ワーキングマザーならではの逸話もたくさん持っていますが、香月さんのお話を聞いていると家族との時間もしっかり確保しています。

香月:この働き方でよかったなと思うのは、ご飯を作ったり、家の用事をするために仕事の合間で家に帰れること。海外で開催される子どものロボットの大会には長期間でもついていけますし、大会前の佳境のときは、大量の手作りご飯の差し入れをしたりもしています。

今年中学生になりましたが、何でも1年生って環境が変わるから、親も子どもも大変。それに寄り添うことも必要になるので、今年は親子で勝負の年なんです。平日もご飯の用意だけして出かけることも多いですし、土日もイベントの司会などで不在にすることも少なくありませんが、今年はアナウンサー業をキューッと縮小して、2つの社団法人と息子の比重を高めています。

―今でこそ、さまざまな働き方のロールモデルが登場していますが、10数年前はまだまだ子どもを預けて働く女性たちは手探りの連続でした。そんななか、会社にも属さず、フリーランスという形で道を切り開いてきた香月よう子さん。10年前も今も女性を取り巻く課題は変わっていないけれど、働き方の選択肢やツールが増えたことで生まれたリモートワークによって、間違いなく働き方は進化しています。

 

この記事の著者:吉田理栄子(Rieko Yoshida)

IMG_7114『トラベルジャーナル』編集部、『ロケーションジャパン』副編集長、編集長などを経て、2013年女児出産。産後半年で復帰するも、1年半におよぶライフワークバランスの試行錯誤の末、2015年9月からフリーランスとなる。ライフワークである「旅」「人」をテーマに取材・執筆活動を続けながら、独立後は「女性の働き方」を明るく、前向きに発信することを目指す。http://team-animo.com


SNSでもご購読できます。

by caster-biz