目の前にいない部下をどう管理する?リモートワーク時代の管理職を考えるイベント

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リモートワークが一般的になってくると、「では、リモートで働く人の管理をどうしたらいいか」という問題が出てきます。多様な働き方に即したマネジメントはどうあるべきか。2016年9月3日、東京都内で行われた「連携カフェ」のイベント「テレワーク時代のマネジメント目の前にいない部下をどう管理する」に参加して考えてきました。

連携カフェとは?
分野・業種の枠を超えた人と人との交流を目的として2008年に始まった異業種交流のカフェ・イベント。それぞれ別の仕事を持っている有志のメンバーが、ボランティアで協力して企画と運営をしている。昨年から「新しい働き方とライフスタイル」をテーマに3つのイベントを開催。
http://peatix.com/group/26232

リモートワークの失敗事例

まず、リモートワーク・テレワーク エヴァンジェリストのながきふみのりさんが登場。成功事例だけでなく、多くの失敗事例も見ている経験から「リモートワーク導入に失敗する企業のパターン」が見えてきたといいます。同じ失敗をしないために4つの類型を紹介してくれました。面白かったので共有します。

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ながきふみのりさん
リモートワーク・テレワーク エヴァンジェリスト。
リモートワーク・テレワーク導入の現場事情に精通し、成功事例のみならず失敗事例にフォーカスすることで、米国直輸入でない日本型リモートワーク・テレワークの普及に尽力している。また、リモートワーク・テレワーク普及に伴うワークスタイルの変化を見越して、通わずに仕事できるパーソナルワークスペース”WAYPOINT”をプロデュース。実業家として新たなワークインフラの構築に乗り出している。

失敗パターンその1「ご褒美リモートワーク」

大企業のA社はまず出産育児の人のための在宅勤務を試行、女性社員のみ、時短なども併用。
しかし「出産子育ての人だけ在宅勤務なんて不公平」「満員電車で通勤して、不在社員の分まで電話対応をさせられる」「独身男性社員には関係ない」などの意見で終了してしまった。

改善点→共有が足りなかった。「今後は男性社員も対象にする」などのアナウンスの必要性。やるときは福利厚生として導入した「ご褒美テレワーク」ではなく平等にリモートワークを選べるようにする。

失敗パターンその2「やりすぎ・やらなすぎ」

B社は中小企業、トップダウンでリモートワーク導入したが、なぜか社長は「俺は対象じゃない」と言ってリモートワークをやらない。すると社員は誰もやらず、立ち消えになってしまった。

改善点→社長が率先すればよかった。

また別の会社は、全社を挙げてリモートワーク導入とアナウンスし、希望しない社員にまで強制「会社の隣に住んでいるのに…」などの意見で終了してしまった。

改善点→リモートワーク以外の選択肢を与えればよかった。

失敗パターンその3「費用負担」

C社の場合、リモートワークを導入すると、労働組合から冷房暖房代などについて「私財を使って会社の業務をさせている」というクレームれがあり、光熱費を会社が負担することに。しかし、個別精算でかかる経理コストなどバックオフィスコストの増大により取りやめてしまった。

改善点→光熱費代は個人負担にして、リモートワーク導入で浮いた交通費などの分を賞与に乗せるなど、従業員も会社も損にならないような仕組みを作れば、そもそもクレームは発生しなかったのでは?

失敗パターンその4「管理職の抵抗」

中小企業のD社が在宅勤務を導入すると部下が会社に通勤しなくなり、管理職だけがオフィスに出勤する事態に。「目の前にいない部下をどう管理する?」と管理職がリモートワーク導入に抵抗して立ち消えになった。

改善点→管理方法を考える。もしやリモートワークに管理職はいらないのでは?

最後の失敗パターンで、「リモートワーク導入の一番の抵抗勢力は中間管理職だ」というお話になり、まだあまり語られていない、リモートワーク時代の管理職のありかたについての問題提起がされました。

オフィスワークでは目の前にいる部下を管理すれば良かったのですが、リモートワークを導入すると目の前にいない部下を管理する必要があります。部下がさぼっていないか、背信行為はないか、逆に働きすぎてストレスをためたり体調を崩したりしていないか、など遠隔でチェックするのは至難の業ですが、いったいどうしたらいいのでしょうか……ということで、話は第二部に移ります。

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先駆者の「管理しない管理」に学ぶ

続く第二部では、特別ゲストとして、リモートワークの実践で最先端を走る株式会社ソニックガーデン代表の倉貫義人さんが登場。リモートワーク時代の社員管理のあり方について、ながきさんと対談しました。筆者が特に印象に残った部分を当日の取材メモより抜き書きします。

倉貫義人さん
株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。
1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープン ソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンの創業を行う。
最新著書『リモートチームでうまくいく マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイル』

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物理出社と論理出社

ながきさん(以下敬称略):出社しない部下をどう管理しているのか?

倉貫さん(以下敬称略):仕事中はネット上のデジタルオフィス”Remotty” https://www.remotty.net/ にログインするきまり。パソコンのカメラでずっと顔を映していれば、みんなの顔が見える。密なコミュニケーションをとらなくても顔が見えいるだけで「あいついるな、今日もきているな」という安心感がある。毎日顔を合わせて、いつでも相談してもいい。物理的に出社しなくても、理論上出社している。

ながき:オンラインで監視されているようだという意見は?

倉貫:むしろオフィスに出社する方が監視されている。「おまえの席はここ」「おまえのパソコンはこれ」とあてがわれて「そこに座っていなさい」というのは、物理的にむっちゃ監視されている。

ながき:リモートならではのコミュニケーションの工夫は?

倉貫:在宅勤務で、放っておくとなくなるのが雑談。相手の姿が何となく見えるような仕組みをオンライン上に再現するため、”Remotty”には独り言を書ける仕組みを作った。ひとりひとりに自分のチャット、自分専用の場所がある。いっぱい書き込んでもいいし、人の書き込みに興味があればレスできる。

私は社長なのでみんなと絡まないが、どういう会話をしているか。チャットで流れているので把握できている。間に中間管理職がいなくても、社員の動向を把握できている。

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ワークプレイスをつくるという試み

ながき:ソニックガーデンでオフィスを廃止し「ワークプレイス」という働く場を提供している経緯は?

倉貫:地方の人は家が広いから自宅に仕事場が持てるが、東京の人はリビングやキッチンの片隅で仕事をせざるを得ない。シェアオフィス借りたり、カフェで仕事をするにしても、移動時間やコストがかかる。そこで仕事場「ワークプレイス」を社員の家に近い自由が丘、町田、岡山に作った。

社員は家で仕事してもいいし、ワークプレイスで働いてもいい。さらにマンションなので寝泊まりができる。地方に住む社員が東京出張の時のホテル代わりになるため、気軽に合宿やお客様に会いに東京に来られるようになった。社員だけでなく家族も無料なので、夏休みなどの家族旅行に、保養所のようなものとしても活用されている。

住み込み型リモートワーク

倉貫:20代のうちは仕事の仕方も身に付いていないため、新卒から3年目まではリモートワーク禁止、出社は必要。3年目を過ぎるとリモートワークの練習をさせるが、いきなり家で仕事をさせるのは心配。ならば「家に先輩社員が通えばいいんだね」ということで町田ワークプレイスは住み込み型になった。

「寝室はおまえの部屋、リビングは会社のもの」として、若手社員が住み込み、近所にすむ先輩が毎日通う、会社から家賃がでるし、通勤も近い、先輩社員も若手社員も喜んでいる。コストはかかるが、オフィスを借りてもコストはかかる。リモートワークはコスト削減のためではない。社員が自宅の机を買い換えるときも経費にできる。会社としては、それでいいプログラムを書いてくれるなら安いものだと考えている。

その後は、リモートワークで管理する人、される人に分かれてそれぞれ希望を話し合うワークや、ながきさんからリモートワーカー向け新規事業のプレゼンテーション。すべて終了後には場所を変えて懇親会も行われ、大いに盛り上がりました。

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ライター所感

ソニックガーデンでは採用面接をSkypeを使ってリモートで行っているそうです。リモートに対応できない人材はいらない、という姿勢がはっきりしています。今回の対談で倉貫さんは「採用時点で組織の価値観に共感できる人を迎え入れる」とおっしゃっていましたが、確かに採用というのはそういうことなのだろうと納得しました。

逆に採用される側から考えると、ひとりひとりが自分の生き方、暮らし方にマッチした働き方を自覚的に探し見つけていくということ。自分にふさわしい場所を見つけるためには、今よりも相当な努力が必要だろうという気がします。

管理する側もされる側も、ただぼんやりと流される時代は終わった。ある意味しんどい部分はありますが、自分の強みを活かす、という方向に向いているということでもあります。面白い時代になってきているということでしょう。

この記事の著者:曽田照子(Teruko Soda)

ライター。広告プロダクションでコピーライター経験後、1992年よりフリー。書籍、広告、WEB、フリーペーパー、情報誌など、多彩な媒体に執筆。得意分野は子育てと生活、女性の生き方。著書「ママが必ず知っておきたい!子どもに言ってはいけない55の言葉」メイツ出版、「『お母さんの愛情不足が原因』と言われたとき読む本」中経の文庫、「お母さんガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気を失う言葉66」学研パブリッシングなど。


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by caster-biz