人件費は固定費と変動費のどっち?4つの分析方法を解説
コスト管理や利益計画を効果的に行うためには、固定費と変動費の違いを正しく理解することが重要です。
そこで本記事では、人件費は固定費と変動費のどちらに分類されるのかを解説します。
固定費と変動費の分析方法を4つ紹介しますので、最後までご覧ください。
固定費と変動費の違い
固定費は売上に関係なく一定で、変動費は売上に応じて変化します。
それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
固定費|売上高に左右されず一定に発生する費用
固定費は、生産や販売の量に関係なく、一定の期間ごとに発生する費用です。
費用の変動が少ないため、長期的な財務計画を立てる際に予測しやすいという特徴があります。
固定費の例
- 人件費
- 地代家賃
- 減価償却費
- リース料
- 広告宣伝費
変動費|売上高や販売数量の増減に応じて変動する費用
変動費は、売上高や生産量に応じて増減する費用です。
費用が売上や生産活動に応じて変化するため、計画時には変動を考慮しなければいけません。
変動費の例
- 原材料費
- 仕入れ費
- 外注費
- 販売手数料
- 運送費
固定費と変動費の細かい分類は難しい
固定費と変動費の細かい分類は難しく、多くの費用は両方の性質をあわせ持っています。
たとえば、残業代や歩合給など、労働時間や成果に連動して変動する人件費は、変動費として扱われます。
一方、基本給や賞与など、労働時間や成果に関係なく固定的に支払われる人件費は、固定費として扱われます。
固定費と変動費は、厳密に分類することにこだわりすぎると業務の進行が滞るため、こだわりすぎず、まずは大まかに分けてしまいましょう。
分類することに時間をかけすぎず、必要になったらその都度、見直すことをおすすめします。
【業種別】固定費・変動費の一覧表
中小企業庁から発行されている「中小企業の原価指標」を参考に、業種別の固定費・変動費の例を紹介します。
業種 |
固定費 |
変動費 |
製造業 | 直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、その他販売費、役員給料手当、事務員・販売員給料手当、支払利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費 | 直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高‐期末製品棚卸高、酒税 |
卸・小売業 | 販売員給料手当、車両燃料費(卸売業の場合50%)、車両修理費(卸売業の場合50%)、販売員旅費、交通費、通信費、広告宣伝費、その他販売費、役員(店主)給料手当、事務員(管理部門)給料手当、福利厚生費、減価償却費、交際・接待費、土地建物賃借料、保険料(卸売業の場合50%)、修繕費、光熱水道料、支払利息、割引料、租税公課、従業員教育費、その他管理費 | 売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料、車両燃料費(卸売業の場合のみ50%)、保険料(卸売業の場合のみ50%) |
建設業 | 労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、現場従業員給料手当、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、その他経費、役員給料手当、退職金、修繕維持費、広告宣伝費、支払利息、割引料、減価償却費、通信交通費、動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)、従業員教育費、その他管理費 | 材料費、労務費、外注費、仮設経費、動力・用水・光熱費(完成工事原価のみ)、運搬費、機械等経費、設計費、兼業原価 |
人件費を固定費から変動費に変える方法
ここからは、人件費を固定費から変動費に変える方法を紹介します。
固定費が少ないほど、会社はより多くの利益を得られます。
業績給を採用し正社員の給料を業績と連動させる
人件費と業績が連動する業績給を導入することで、業績悪化時の負担軽減につながります。
しかし、全国的な賃上げの流れの中で、基本給を減らすことは従業員の士気を下げかねません。
基本給を維持しながら、変動費の割合を増やすことで賃金を引き上げるとよいでしょう。
たとえば、社員の努力を評価してポイントを付与し、商品交換や社員同士の感謝の場として活用している企業もあります。
インセンティブ制度は、人件費最適化と社員のモチベーション向上に効果的です。
外注や業務委託を利用し人件費を削減する
業務の一部を外部企業に委託することで、従業員を直接雇用せずに人材を活用できます。
必要な時に必要な分だけ業務を依頼できるため、人件費を変動費化し、業務量の変化に柔軟に対応できるでしょう。
逆に、季節性のある業務に正社員を割り当ててしまうと、閑散期には正社員が時間を持て余すことになりかねません。
正社員の基本給は固定費として閑散期にも同じようにかかってしまいますので、業務内容に合わせたアウトソーシングを活用し、人件費を削減しましょう。
関連記事:外注の意味や委託、請負との違いを解説!業者を外注するメリット・デメリット
派遣社員などの非正規雇用を採用する
正社員ではなく、パートタイムや契約社員を採用することで、労働時間や雇用期間を柔軟に調整できます。
これにより、労働コストを変動費として管理しやすくなります。
非正規雇用では全員にシフトを振り分けることができ、負担を分散できます。
一方で需要が減る場合は、勤務時間を減らして人件費を抑えることが可能です。
固定費と変動費の分析方法4つ
固定費と変動費は、売上や生産量との関係性によって区別され、事業計画や収益管理において重要な要素です。
変動費と固定費に関連して推測できる4つの指標を紹介します。
- ①限界利益率
- ②損益分岐点
- ③安全余裕率
- ④売上高変動費比率
それぞれ詳しく見ていきましょう。
固定費・変動費の分析方法①限界利益率
限界利益率は、売上から変動費を差し引いた限界利益を売上で割ったものです。
以下の計算式で求められます。
限界利益=売上高-変動費
限界利益率=限界利益÷売上高
経常利益=売上高-変動費-固定費=限界利益-固定費
限界利益率は、製品をひとつ販売するごとに、固定費の回収や利益獲得にどれだけ貢献できるかを示しています。
この数値が高いほど、固定費を回収しやすいと言えます。
例として、以下の条件で限界利益を計算します。
- 売上高:1,000,000円
- 変動費:600,000円
限界利益は、1,000,000円-600,000円=400,000円です。
限界利益率は、400,000円÷1,000,000円=0.4または40%と求められます。
売上高の40%が固定費の回収や利益に貢献していることを示しています。
固定費・変動費の分析方法②損益分岐点
損益分岐点とは、企業の売上と費用が等しくなる点、つまり利益がゼロとなる売上高のことです。
この点を超えると利益が出始め、それ以下だと損失が発生します。
損益分岐点の計算式は、損益分岐点売上高=固定費÷{1-(変動費 ÷ 売上高)}です。
例として、飲食店の経営データを元に解説します。
- 月間固定費:1,000,000円(家賃、人件費、光熱費など)
- 変動費率:40%(材料費、飲料費など)
- 販売価格(一杯あたり):500円
この飲食店の損益分岐点売上高は、固定費÷{1-(変動費 ÷ 売上高)}に当てはめます。
1,000,000円÷(1-0.4)=1,666,667円
つまり、この飲食店は1ヶ月に約1,666,667円の売上高をあげれば、利益がプラスマイナスゼロになり、損益分岐点を達成できることになります。
固定費・変動費の分析方法③安全余裕率
安全余裕率は、現在の売上高が損益分岐点をどれだけ上回っているかを示す指標です。
企業がどの程度の売上高減少に耐えられるかを判断するために用いられます。
安全余裕率は、(売上高-損益分岐点売上高)÷売上高×100で求められます。
例として、飲食店の例を用いて、安全余裕率を計算します。
- 月間売上高:2,000,000円
- 損益分岐点売上高:1,666,667円
この飲食店の安全余裕率は、(2,000,000円-1,666,667円) ÷2,000,000円×100=16.67%です。
安全余裕率の目安は、10%〜20%未満が平均値です。
平均値未満の場合は、今後の経営に注意する必要があるでしょう。
固定費・変動費の分析方法④売上高変動費比率
売上高変動費比率は、売上高に占める変動費の割合を示す指標です。
比率を見ることで、売上高に対する変動費の影響度を把握し、価格設定やコスト管理の改善に役立てられます。
売上高変動費比率は変動費÷売上高×100で求められます。
例として、以下の飲食店の売上高変動費比率を紹介します。
- 月間売上高:2,000,000円
- 変動費:800,000円
売上高変動費比率は、800,000円÷2,000,000円×100=40%です。
平均的な数値としては70〜80%程度と言われています。
平均以下の場合、経営環境の変化に弱いと判断できます。
中小企業は大企業よりも平均が低く設定されているため注意が必要です。
固定費と変動費の違いまとめ
固定費と変動費は、売上や生産量との関係性によって区別され、事業計画や収益管理において重要な要素です。
固定費は売上に関わらず一定額発生する費用で、人件費や家賃などが該当します。
一方、変動費は売上や生産量に応じて変動する費用で、材料費や販売手数料などが挙げられます。
人件費は一般的に固定費に分類されますが、業績給や非正規雇用の活用などにより変動費化する事も可能です。
固定費と変動費の分析には、限界利益率、損益分岐点、安全余裕率、売上高変動費比率といった指標を用います。
これらの指標を活用することで、経営者は事業の収益構造を把握し、適切な経営判断を行うことが可能となります。
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