公開日 2024.09.03 更新日 2024.09.06

社内外注とは?概要やメリット、労務上の注意点を解説

多様な働き方が注目されている昨今、企業によるリソースの使い方も多様化しつつあります。
そのうちの一つである“社内外注”をご存じでしょうか?
外注を適切に活用することで、自社雇用よりも効率的に役務を提供できるようになるかもしれません。

 

そこで本記事では、社内外注の概要やメリットを、活用する際の注意点とともにお伝えします。
業務改善やコストの見直しをお考えの経営者様は、ぜひご一読ください。

社内外注とは?


業務委託契約を結んでいる個人事業主に、自社の事業所に出勤して業務を進めてもらうことを“社内外注”といいます。
法律上で正式に定義づけられている言葉ではありませんが、雇用契約を結んでいる社員やアルバイトと区別するために、このようによばれることがあります。
また、元々は自社の従業員だった人材を業務委託に切り替えることを“社員の外注化”とよぶこともあるようです。

 

そもそも外注とは、自社の業務を外部の業者に発注することを指す言葉です。
社内外注は、その形態自体は従来の“外注”と実質的に同じでありながらも、自社の従業員と同じように事業所で業務を行います。

雇用契約と業務委託の違い

自社従業員と社内外注の大きな違いは、企業と結んでいる契約が“雇用契約か、業務委託契約か”という点にあります。

 

まず雇用契約とは、労働者が雇用主の指示に従って業務を遂行し、その対価として報酬(賃金)を受け取るという、民法上で定義されている契約です。
一方の業務委託契約は、それ自体は法律で定義されている契約ではなく、“請負契約”“委任契約”“準委任契約”のいずれかを指す言葉です。
この3つはそれぞれ異なる契約ではあるものの、業務の遂行あるいはその成果、または納品物に対して報酬が支払われる、という点は共通しています。

 

雇用契約と、業務委託契約に該当する3つの契約の概要を以下に整理しました。

 

雇用契約と業務委託契約それぞれの特徴

契約の種類 概要
雇用契約 労働者が雇用主の指示に従って労働に従事し、雇用主はその労働に対して報酬を支払う。
業務委託契約 請負契約 受託者が発注者に依頼された仕事の完成や、成果物の納品を遂行し、発注者はその対価として報酬を支払う。
委任契約 受託者が発注者に依頼された業務の遂行またはそれによる成果を収め、発注者はその対価として報酬を支払う。業務内容は法律行為のみ。
準委任契約 受託者が発注者に依頼された業務の遂行またはそれによる成果を収め、発注者はその対価として報酬を支払う。業務内容はあらゆる業務(事実行為)が該当する。

雇用契約の場合は、雇用主からの“指示”に従うのに対し、業務委託契約では発注者からの“依頼”に応じるというかたちになります。
また雇用契約を結んでいる労働者は、企業に所属しているかたちになり、労働保険や社会保険の加入、有給休暇の取得など、労働法で保障されている保護を受けられます。
対し、業務委託契約の場合はフリーランスや個人事業主の扱いになるため、企業の一員として所属しているわけではなく、労働保険などの保護もありません。

 

日常的に業務にあたるうえでは、“事業所で仕事をしている”という見かけのうえでは同じに見える従業員と社内外注も、契約上はさまざまな点で異なるというわけです。

社内外注を活用するメリット

 

直雇用とも、一般的な外注とも異なる社内外注には、企業にとって主に以下の2つのメリットがあります。

 

【社内外注のメリット】

  • 人件費を抑えられる
  • 報酬額が明確になり事業計画の見通しを立てやすくなる

以下で一つずつ解説いたします。

メリット①人件費を抑えられる

社内外注は、直雇用とは法律上の扱いが異なる関係で、人件費を抑えられるというメリットがあります。
業務委託契約にあたる社内外注では、たとえば以下の人件費を支払う必要がありません。

 

社内外注で抑えることのできるコスト

  • 会社が負担する社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)
  • 労働保険料(雇用保険料・労災保険料)
  • 残業代
  • ボーナス
  • 福利厚生費

また、社内外注を活用すれば、月単位での人件費も柔軟な調整が可能です。
たとえば自社従業員の場合は、雇用契約を結んでいる以上はたとえ閑散期であっても、一定の給与を支払わなければなりません。
その点、社内外注であれば、業務の繫閑に応じて必要なときのみ契約を結べばよく、さらに依頼した業務に対してだけ報酬を支払えばよいので、閑散期のコストを抑えられます。

 

会社に属しておらず、あくまでもいち個人として会社と契約を結んでいる社内外注だからこそ、必要なリソースとして確保したうえで人件費の削減が叶うのです。

メリット②報酬額が明確になり事業計画の見通しを立てやすくなる

社内外注を活用すれば、自社が支払うべき報酬額が明確になるため、事業計画が立てやすくなるというメリットも存在します。

 

社内外注に報酬を支払う条件は、契約内容によって細部こそ異なれど、“求めた成果に対して決められた報酬を支払う”という点は明確になっています。
あらかじめ支払うべきコストがわかっているからこそ、ある程度の見通しを立てることができるというわけです。

 

また、社内外注で優秀なスタッフを複数確保できれば、社内外注のみでチームを組んで事業を立ち上げることも可能になります。
たとえば、サービスの開発・運営は自社で行い、営業は社内外注に任せるといった具合です。

 

このように、社内外注は目先のリソース確保だけでなく、経営における長期的なメリットにおいても一役買うことができます。

社内外注 を活用するうえで大切なこと

 

企業にとってメリットの大きい社内外注ですが、活用を考えているのであれば、気を付けなければならない点があります。
それは、“雇用”と見なされないために、自社従業員との区別を明確にする必要がある、ということです。

 

たとえ書面上で取り交わした契約が業務委託契約だったとしても、その実態が雇用であれば、雇用と見なされ、雇用と同等の扱いを求められる可能性があるのです。
一例を挙げると、未払残業代の請求を受けたり、労災・安全配慮義務違反の追求を受けたり……といったことがあり得ます。
また詳細は後述しますが、税務調査によって「これは雇用なので、これまで支払ってきた外注費は給与にあたる」と判断されると、追加で税金を支払うことになります。

 

たとえば、社内外注であっても以下の表の“正社員雇用”の各項目に該当していると、雇用と同等のルールが適用される可能性があるため、注意したいところです。

正社員雇用 業務委託契約
業務遂行について 雇用主の指揮命令下にある 個別の指揮命令は受けない(発注の際の指示のみ)
業務命令について 拒否できない 拒否できる
働く時間・場所 雇用主の指示に従う 拘束されることはない
備品について 雇用主が負担・用意する 自身で用意する必要がある
受け取るお金の種類 給与 報酬

あくまでも、社内外注は“外注”であり、業務委託契約にあたるため、雇用契約を結んでいる自社従業員と同じ扱いとならないよう気を付けましょう。
注意すべき具体的なポイントについては後述しますので、引き続き本記事をご覧ください。

給与と外注費の違い

雇用契約の場合は従業員に給与を支払いますが、社内外注となる業務委託契約の場合は報酬を支払うこととなり、この報酬は会計上で“外注費”として処理されます。
ただし先述の通り、社内外注が雇用と見なされた場合は、自社が支払うのは報酬ではなく給与という扱いになります。

 

報酬が給与になると、源泉所得税や消費税などの扱いが報酬と異なり、別途支払う必要が出てくるため、注意しなければなりません。
また、この“社内外注が雇用と見なされる”というシチュエーションは、ほとんどの場合、納付期限後の税務調査によって起こりえます。
税務調査で「これは社内外注ではなくて雇用にあたるので、適宜税金を支払うように」と指示された時点で、本来の納付期限を過ぎているということです。
そのため、必然的に延滞税も発生し、支払わなければならない金額がさらに増えてしまうということにも留意が必要です。

外注と社員を区別するために押さえておきたいポイント

 

業務委託契約にあたる社内外注は、自社雇用している社員と定義が異なるため、さまざまな面で区別しなければならないことがわかりました。
基本的には、以下の4つのポイントを意識すれば、雇用に該当することなく社内外注を活用できます。

 

【社内外注で押さえておきたいポイント】

  • 書面で契約を結ぶ
  • 請求書を出してもらう
  • 仕事に対して報酬を支払う
  • タイムカードで時間を管理しない

いずれも大切なポイントですので、必ずご確認ください。

書面で契約を結ぶ

社内外注として業務を依頼するのであれば、契約書を作成し、請負契約あるいは準委任契約である旨を明記する必要があります。

 

また、業務委託契約の場合は、雇用と異なり、労働基準法のような厳格な決まりはありません。
そのため、業務上の細かな決まりについては、自社と受託者の双方で取り決めることとなります。
のちのトラブルを避けるためにも、契約内容は口頭確認で済ませるのではなく、契約書に明記しておきましょう。

請求書を出してもらう

社内外注先となる受託者には、毎月の支払いの際、必ず請求書を提出してもらいましょう。

 

業務委託契約における報酬は、給与と異なり、受託者から請求を受けて支払うという仕組みになっています。
請求書がないにもかかわらず、報酬を支払ってしまっては、給与と見なされるおそれがあるため、請求書を受け取ってから支払うというルールは必ず守らなければなりません。

仕事に対して報酬を支払う

社内外注の場合は、仕事の成果や納品物といった“結果”に対して報酬を支払う、という仕組みを徹底することを推奨します。
なぜなら、業務に割いた時間を基準にして報酬を計算すると、時間給、つまり給与として支払っていると見なされかねないためです。

 

社内外注の報酬は、あくまでも完成した仕事を受け取って支払うものと捉えると安全です。

タイムカードで時間を管理しない

雇用している従業員はタイムカードを押している場合でも、社内外注のスタッフはタイムカードで管理しないよう、気を付けたいところです。

 

先ほど『社内外注を活用するうえで大切なこと』でお伝えしたように、社内外注、つまり業務委託契約では業務にあたる時間や場所を拘束することはできません。
もしタイムカードを使って管理していると、従業員と同じように勤務時間を管理していると見なされるため、社内外注ではタイムカードを使わないほうが賢明です。

社内外注は、自社従業員と区別したうえで適切に活用しよう

今回は、社内外注について解説いたしました。
事業所に出勤しながら、個人として業務にあたる社内外注は、企業にとってコストの面で大きなメリットがあり、人件費を抑えながらリソースの確保が叶います。
ただし、雇用契約を結んでいる自社従業員との区別を明確にしなければ、法律違反となってしまうおそれがある点には十分な注意が必要です。

 

コスト削減とリソース確保を両立したいのであれば、明確な“外注先”として業務をサポートする、リモートアシスタントサービスを使うという選択肢もあります。
オンライン秘書のCASTER BIZ assistantでは、最低6ヶ月~の契約期間で、プロのアシスタントチームがバックオフィス業務を遂行いたしますので、ぜひご相談ください。