中小企業が育休取得を推進するには?人員不足への対策も解説
2022年4月に改正された“育児・介護休業法”により、近年さまざまな企業が、育児休業取得に向けての取り組みを進めています。
とはいえ、人員不足の問題と板挟みになり、苦慮されている企業のご担当者様も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、中小企業が育児休業の取得を推進するための課題や対策を解説します。
企業と従業員のより良い関係構築をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも育児休業とは?
“育児休業制度”とは、従業員が出産や育児を理由に、会社を一時的に休業できる、国が定めた制度です。
企業規模にかかわらずすべての企業が対象となり、たとえ会社に個別の制度が設けられていなくとも、従業員は育児・介護休業法に基づいて育児休業を取得することができます。
混同されがちな“育児休暇”は、各企業が個別で設けている制度です。
以降、この記事で表記されている育休は、国が定めた育児休業制度を指すこととします。
中小企業における育休取得の実態
厚生労働省の“令和5年度雇用均等基本調査”によると、男性の育休取得率は30.1%、女性の取得率は84.1%でした。
この結果からもわかるように、男性の育休取得率は依然として低い数値のままです。
同調査の、事業所規模別の取得率は、500人以上の事業所で65.7%、100~499人の事業所で37.3%、30~99人の事業所で23.9%と、小規模になるにつれて低くなる傾向があります。
また、令和5年6月に策定された“こども未来戦略方針”では、民間企業における男性の育休取得率を、2025年までに50%、2030年までに85%にするという目標を掲げています。
そのため、現状に鑑みると、育休の取得率を増加させるためには、さらなる対策が必要であるといえるでしょう。
参照元:厚生労働省
従業員が育休を取りやすくするために行うべき対策方法
せっかく企業として育休の取得を推進していたとしても、その方針が従業員一人ひとりに浸透していなければ、育休を申請しにくい雰囲気はなかなか払拭できないかもしれません。
そこで以下に、従業員が育休を取りやすくするために、企業が行うべき対策方法をまとめました。
育休を取得しやすくするための対策方法
- 育休に関する研修を実施する
- 育休に関する相談体制を整える
- 自社の従業員の育休取得事例を共有する
- 自社の従業員へ育休制度と育休取得促進に関する方針を周知する
育休を取得しやすくするためには、職場全体と本人への働きかけがポイントです。
育休に関する体制を職場全体で整え、育休取得が推進されていることを休業者本人がしっかり理解することが大切です。
関連記事:中小企業の業務改善で意識したい点と具体的な進め方を解説
中小企業が育休を推進するメリット
育休の取得を推進することで、従業員同士でフォローしあう空気感が生まれたら嬉しいですよね。
さらに、これまでより少ない人数で成果を出さなければならないことから、業務の進め方を見直すきっかけにもなります。
育休の取得を推進することが、企業にもたらすメリットは下記の4つです。
【育休を推進することで企業が得られるメリット】
- 従業員の満足度が向上する
- 業務改善のきっかけになる
- 企業のイメージアップになる
- 採用面に好影響を与える
それでは、一つずつ詳細に解説します。
メリット①従業員の満足度が向上する
育休を取得しやすい体制を整えると、従業員の満足度の向上につながります。
福利厚生を手厚くすることで、安心して働ける会社であることを、従業員に伝えることができます。
会社のサポートによって、従業員が公私ともに充実させることができれば、おのずと満足度が向上するでしょう。
メリット②業務改善のきっかけになる
育休の取得者の発生は、業務内容を見直すきっかけになり、今後の業務の効率化が見込めます。
一般的に、休業者が出ると、そのぶん残った従業員に業務のしわ寄せがいくというマイナスなイメージを抱いてしまうことが多いでしょう。
しかし、育休の場合、急な病欠や離職と異なり、対象となる従業員が仕事を離れる前に十分な準備期間が設けられます。
この準備期間を利用して業務の内容を見直し、チームの体制を改めて整えることで、少ない人数でいかに効率的に業務を回せるかを考えることができるのです。
その結果、人員不足を補いつつ、効率化を図った体制が再構築され、業務の改善につながります。
メリット③企業のイメージアップになる
育休の取得を推進することで、企業の価値が向上し、イメージアップにつながります。
たとえば、厚生労働省では、子育ての支援を積極的に行っている企業へ“くるみんマーク”の認定を行っています。
くるみんマークとは、子育てに関する9つの認定基準を満たした企業に対して、厚生労働大臣が与える子育てサポート企業としての証です。
この認定を受けた企業は、育休の取得に前向きな企業としてアピールでき、イメージアップを図れます。
参照元:厚生労働省
メリット④採用面に好影響を与える
育休の取得を推進することは、採用面においても好影響です。
女子大学生はもちろんのこと、近年、男子大学生のあいだでも「育休を取得して積極的に子育てに参加したい」と考える割合が年々増加傾向にあります。
このことからも、就活生がエントリーするにあたって、子育てに前向きな企業かどうかは、大事な判断材料になっていることがわかります。
仕事と育児の両面において、サポート体制が整っているとアピールすることで、より多くの学生と出会えるでしょう。
参照元:株式会社マイナビ
中小企業における育休取得の課題
育休取得の推進にメリットがあるとわかってはいても、なかなか一歩踏み出せないご担当者様も多いのではないでしょうか。
それは、以下でお伝えする、育休取得を推進するうえでの課題を解決できていないからかもしれません。
まずは、企業にとってどのような課題があるのか見ていきましょう。
育休制度の未整備・職場内の理解不足
そもそも自社の育休制度がきちんと整備されていなかったり、育休に対して理解が浅い従業員がいたりしませんか。
2022年4月に育児・介護休業法が改正されてから、さまざまな企業が育休の取得を推進していますが、残念なことに一部の企業では、まだきちんと制度が整っていない現状があります。
下記は、厚生労働省の調査“令和4年度仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業”から、育休を取得しなかった従業員が回答した、上位3つの理由です。
男女別、育休を取得しなかった理由のアンケート結果
男性(正社員・職員) | 女性(正社員・職員) | |||
1位 | 収入が減るため | 28.8% | 収入が減るため | 23.9% |
2位 | 会社の制度が整備されていなかったため | 22.1% | 会社の制度が整備されていなかったため | 17.9% |
3位 | 制度について理解していなかったため | 12.8% | その他 | 13.6% |
男女ともに「会社の制度が整備されていないこと」が2番目に多く挙がっており、その点も取得率が増加しない原因の一つであることがわかります。
また、表には記載されていませんが「会社や上司の理解がなかったから」という理由でも、男性11.7%、女性8.8%の回答を集めました。
上司や同僚から理解が得られないことも、まだまだ課題といえるでしょう。
参照元:厚生労働省
業務の属人化
業務の属人化が、育休の取得を阻む原因になっている可能性があります。
特定の担当者しか、業務の状況を把握していない状態になると、その担当者をなるべく不在にしたくないという空気感が出てしまうためです。
そのため企業は、業務の属人化を解消し、いつ誰が育休に入っても対応できるように、業務フローを整えておくことが重要です。
人員不足
企業の人員不足も、育休取得の推進を妨げる課題の一つです。
下記は、男性従業員の育休取得を「促進する予定がない」と回答した経営層191人にその理由を聞いて、結果をまとめたものです。
男性従業員の育休取得を促進しない理由(複数回答)
企業規模が小さい | 53.4% |
従業員の人数が少なく、休業中の従業員の代替要員の手当ができない | 30.4% |
休業する従業員以外の従業員の負担が大きい | 28.3% |
これから子育て期を迎える男性従業員がいない | 18.3% |
休業中の従業員の経済的保障をする余裕がない | 16.2% |
「企業規模が小さい」という回答が半分以上を占めており、次いで「従業員の人数が少なく、休業中の従業員の代替要員の手当ができない」という理由が挙がっています。
この結果から、育休取得者を補える人員がいないという状況が、中小企業における育休取得推進の大きな課題といえます。
参照元:積水ハウス
中小企業での育休取得における人員不足への対策方法
人員不足は、育休取得率の停滞に大きな影響を与えています。
この問題に対して対策を講じなければ、中小企業の取得率が上がらない状況を変えることは難しいでしょう。
そこで、中小企業が行うべき人員不足への対策方法は、以下の4つのプロセスです。
【人員不足への対策方法】
- 不要な作業を洗い出す
- 業務フローを見直す
- 代替できる業務はツールに置き換える
- アウトソーシングを導入する
ここから、一つずつ詳しくお伝えしますので、しっかりと押さえておきましょう。
ステップ①不要な作業を洗い出す
人員不足への対策方法として、不要な作業の洗い出しは特に重要です。
洗い出しを行う際には「もし、従業員が今の半分になったら、売上をキープするために優先すべき業務は何か」と問答してみることをおすすめします。
そうすることで、かたちばかりの会議や手間のわりに売上につながらない業務、特定の担当者だけが行ってきた業務など、ある程度削減可能なものが見えてくるかもしれません。
ステップ②業務フローを見直す
業務フローは、最小限の工数で最大限の成果を出せるものにしましょう。
フォーマットにバラつきがなく、誰がやっても同じ結果を出せるようにすることが見直すうえでのポイントです。
さらに、個人、チーム、部署と、レベルに応じて全体で見ても最適なフローになっているか確認することが大切です。
ステップ③代替できる業務はツールに置き換える
業務の洗い出しや、業務フローの見直しで明らかになってきた、優先度の高いタスクのなかで、定型業務に関しては、デジタルツールに頼ることも一つの手です。
導入にはコストがかかりますが、精度と速度ともにツールのほうが人間の力量を上回るため、長期的にとらえるとコストパフォーマンスは良いといえます。
そのぶん、人には人にしか成し得ない、事業拡大においての企画立案などの業務に集中することができます。
ステップ④アウトソーシングを導入する
ここまでの方法でも切迫した状態を回避できない場合は、業務を外注できるアウトソーシングの導入がおすすめです。
新たに人を雇うこともよいのですが、やはり新規の雇用にはコストや教育の手間がかかってしまいます。
そのうえ、育休を終えた従業員が復帰したときには、再配置を考えなければなりません。
しかし、アウトソーシングを導入すれば、採用や教育のコストが発生せず、臨機応変に依頼する量や内容を調整できます。
人材の補填についてお考えの企業様は、ぜひアウトソーシングの導入を検討してみてください。
中小企業が育休取得を推進するには業務の効率化が大切
今回は、中小企業が育休を推進するメリットをはじめ、推進するうえでの課題や対策方法を解説しました。
育休の取得率は年々増加傾向にありますが、企業の人員不足や、制度の未整備など、まだまだ課題は残っています。
特に人員不足は、育休取得を妨げる大きな要因と考えられるため、業務内容の見直しやアウトソーシングを導入することで対策していきましょう。
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