AIで看護業界はどう変わる?医療現場への影響と活用例を解説

看護現場では、人手不足や業務量の増加により、業務効率化が大きな課題になっています。
そのため、AIの導入を検討しているものの「何ができるのか」「安全に使えるのか」と不安を感じる方もいるでしょう。
実際に、以下のような業務に課題を感じている医療機関も少なくありません。
- 看護記録の作成
- 申し送り
- 夜勤中の患者ケア
- インシデント防止
- シフト作成や情報共有
AIは看護師の仕事を奪うものではなく、業務効率化を支援し、患者ケアに集中しやすくする手段です。
この記事では、AIの活用によって看護現場がどのように変わるのか、活用事例やメリット・デメリット、導入時の注意点をわかりやすく解説します。
AIに看護師の仕事は奪われる?
AIの活用が広がるなかで、「看護師の仕事がAIに奪われるのではないか」と不安に感じる方もいるでしょう。
結論から言うと、AIが看護師を完全に代替する可能性は低いと考えられます。
一方で、AIが得意とする業務と、看護師にしか担えない業務があります。
AIが活用されやすいのは、次のような定型業務です。
- 看護記録の整理データ分析
- 定型的な問診
- シフト作成の補助
AIは看護師の仕事を置き換えるのではなく、業務負担を軽減し、患者ケアを支えるための技術です。
AIに代替されやすい看護業務
AIが得意なのは、定型化しやすく、データをもとに処理できる業務です。
たとえば、以下のような業務はAIによる支援と相性がよいといえます。
- 看護記録の下書き作成
- 患者情報の整理
- 定型的な問診
- データ分析
- シフト作成の補助
これらは看護師の判断を置き換えるものではなく、記録作成や情報整理などの業務を効率化するために活用されています。
一方で、患者ごとの状況を総合的に判断することは得意ではありません。
AIに代替されにくい看護業務
患者の不安に寄り添うことや、表情・会話から状態の変化を読み取ることは、AIだけでは代替しにくい業務です。
また、以下のような対応も看護師が担う重要な役割です。
- 家族への説明や精神的な支援
- 多職種との連携
- 倫理的な判断
- 急変時の対応
- 患者ごとの状況に応じた声かけ
看護には、数値や記録だけでは判断できない観察力や対応力が求められます。
そのため、患者一人ひとりに寄り添う看護は、今後も看護師が担う重要な役割です。
AI時代に看護師に求められる役割
AI時代の看護師には、技術を活用しながら、観察力や判断力、コミュニケーション力を発揮することが求められます。
記録作成や情報整理をAIに任せることで、患者の表情や訴え、生活背景に目を向ける時間を確保しやすくなります。
重要なのは、「AIに仕事を奪われるか」ではなく、「AIを活用してより質の高い看護を提供できるか」という視点です。
看護現場でAIを活用することでできること
AIは、看護記録や情報整理、患者の見守り、リスク予測など、さまざまな看護業務を支援できます。
ここでは、看護現場でAIをどのように活用できるのか、具体的な業務ごとに紹介します。
看護記録・申し送りの効率化
AIは、看護記録や申し送りの作成にも活かせます。
たとえば、音声入力AIを使えば、内容をテキスト化し、看護記録の下書きを作成できます。
生成AIは、次のような作業にも役立ちます。
- 会話内容の要約
- 申し送り内容の整理
- 記録文のたたき台作成
記録作成にかかる時間を短縮できるため、看護師が患者ケアにより多くの時間を充てやすくなります。
AI問診による情報収集の効率化
AI問診を導入すれば、事前に入力してもらった情報を、医師や看護師が確認しやすい形に整理できます。
入力する情報には、現在の症状や既往歴、服薬状況、生活背景、アレルギーの有無、受診に至った経緯などがあります。
従来の問診では、聞き取り内容にばらつきが出たり、確認漏れが発生したりすることがありました。
一方、AI問診では必要な項目を一定の流れで確認できます。
その結果、問診時間の短縮だけでなく、患者情報の整理や聞き漏れ防止にもつながります。
患者の見守り・不穏行動の検知
AIカメラやセンサーを利用すれば、患者の離床や転倒につながる動き、不穏行動の兆候などを検知できます。
特に夜勤帯は、限られた人数で複数の患者を見守る必要があるため、看護師の負担が大きくなりやすい時間帯です。
AIを活用することで、異変の兆候に気づきやすくなり、早めの対応につなげられます。
ただし、AIはあくまで見守りを補助するものであり、最終的な判断や対応は看護師が行なう必要があります。
転倒・転落リスクの予測
AIは、電子カルテや患者状態のデータをもとに、転倒・転落リスクの高い患者を予測できます。
たとえば、年齢や既往歴、服薬状況、過去の転倒歴、移動能力などの情報を分析し、転倒・転落リスクの高い患者を抽出します。
転倒・転落は、入院中の重大なインシデントにつながる可能性があるため、早期の対策が重要です。
AIによるリスク予測を取り入れることで、見守り体制の強化や環境調整を進めやすくなり、医療安全の向上にもつながります。
バイタルサイン測定・患者状態の把握
AIは、バイタルサインを分析し、患者の状態を把握するのに役立ちます。
患者データの変化をAIが分析することで、異常の兆候に早く気づきやすくなります。
ただし、AIが示す情報は看護師の観察を補助するためのものです。
患者の表情や訴え、普段との違いを踏まえた最終的な判断は、看護師が担う必要があります。
新人教育・院内マニュアルの確認
生成AIやチャットボットは、新人教育や院内マニュアルの確認にも役立ちます。
院内マニュアルや看護手順、よくある質問などをAIに登録しておけば、業務中でも必要な情報をすぐ確認できます。
必要な情報をすぐ確認できる環境を整えることで、教育担当者の負担軽減や業務の属人化防止につながります。
ここまで紹介したAIの活用例と期待できるメリットを、以下の表にまとめました。
| AIを活用できる業務 | 期待できるメリット |
|---|---|
| 看護記録・申し送り | 記録時間の短縮、情報共有の効率化 |
| AI問診 | 問診時間の短縮、聞き漏れ防止 |
| 患者の見守り | 夜勤帯の負担軽減、異変の早期発見 |
| 転倒・転落リスク予測 | インシデント防止、医療安全の向上 |
| バイタルサイン測定 | 異常の早期発見、観察業務の補助 |
| 新人教育・マニュアル確認 | 教育負担の軽減、属人化の防止 |
看護現場でAIを活用する際のデメリット・注意点
看護現場でAIを活用する際は、業務効率化などのメリットだけでなく、医療現場ならではのリスクも理解しておく必要があります。
特に、患者情報の取り扱いやAIの判断精度・責任の所在・現場への定着方法などは、導入前に確認しておきましょう。
個人情報・医療情報の取り扱いに注意が必要
看護現場でAIを活用する場合、患者の氏名・症状・既往歴・看護記録などの個人情報・医療情報を扱う可能性があります。
特に生成AIを使う際は、無料の外部ツールに患者情報をそのまま入力しないよう注意が必要です。
安全に運用するためにも、導入時には「入力できる情報」「アクセス権限」「データの保存先」「利用履歴の管理方法」などのルールを整備しておきましょう。
AIの判断が必ず正しいとは限らない
AIは患者データをもとに予測や提案を行ないますが、その内容が必ず正しいとは限りません。
転倒リスクの評価や看護記録の作成支援、不穏行動の検知などでも、誤った情報を示したり、判断材料として十分でなかったりする可能性があります。
そのため、AIの結果をそのまま採用するのではなく、最終的には看護師や医師が確認する必要があります。
AIは最終判断を行なうものではなく、判断を支援するツールとして活用することが大切です。
導入コストや教育コストがかかる
AIを導入する際は、システム利用料や初期設定費用だけでなく、運用や保守にかかる費用も発生します。
具体的には、スタッフ教育やマニュアル作成、運用ルールの整備、既存システムとの連携、トラブル対応などが挙げられます。
とくに、現場の看護師が使いこなせなければ、期待した効果は得られません。
導入前には費用対効果に加え、教育体制や運用開始後のサポート体制も確認しておきましょう。
医療事故が起きた場合の責任の所在を明確にする必要がある
AIの提案や予測をもとに対応した結果、医療事故が発生した際に誰が責任を負うのか、事前に整理しておく必要があります。
たとえば、AIが示したリスク評価を看護師が確認せずに対応した場合、責任の所在が曖昧になるおそれがあります。
医療安全の観点からも、AIの活用範囲や確認フロー、最終判断を行なう担当者を院内ルールとして明確にしておかなければなりません。
現場スタッフに心理的な抵抗が生じる可能性がある
AI導入に対して、現場スタッフが不安や抵抗感を持つ可能性もあります。
なかには「AIに仕事を奪われるのではないか」「操作が難しそう」「かえって業務が増えるのではないか」と感じる看護師もいます。
そのため、AIを導入する目的や期待する効果を、事前に丁寧に共有することが大切です。
現場スタッフの理解を得ながら段階的に導入を進めることで、定着しやすくなります。
システム障害時の代替運用を決めておく必要がある
AIや関連システムに障害が発生した場合に備え、代替運用を決めておくことが重要です。
AIに頼りすぎていると、システム停止時に看護記録や情報共有、患者の見守りなどに支障が出るおそれがあります。
事前に、以下のような対応を決めておきましょう。
- 紙の記録へ切り替える手順
- 情報共有の方法
- 障害発生時の連絡体制
- 復旧後の記録整理の流れ
AIを安全に活用するためには、通常時だけでなく、システム障害を想定した対応手順も整備しておきましょう。
AIを安全かつ効果的に活用するためには、メリットだけでなく、導入時の注意点や運用ルールにも目を向ける必要があります。
ここまで紹介したAI活用のメリットと注意点を、以下の表にまとめました。
| 活用内容 | メリット | 注意点・デメリット |
|---|---|---|
| 看護記録・申し送り | 記録時間の短縮 | 誤変換や内容確認が必要 |
| AI問診 | 問診業務の効率化 | 入力内容の精度に依存 |
| 見守りAI | 夜勤負担の軽減 | 誤検知・見逃しの可能性 |
| リスク予測 | インシデント防止 | AI予測を過信できない |
| バイタル管理 | 異常の早期発見支援 | 最終判断は看護師が行なう |
| 教育支援 | 新人負担の軽減 | 情報更新が必要 |
医療・看護現場におけるAIの活用事例
AIは、すでに医療・看護現場のさまざまな業務で活用されています。
ここでは、記録業務の効率化、転倒・転落リスクの予測、問診支援など、実際の医療機関で導入されている事例を紹介します。
【記録業務】音声要約機能
南部徳洲会病院では、ユビー生成AIの音声要約機能を活用し、IC記録の作成や外来診察内容の記載などを効率化しています。
音声入力と文章生成を組み合わせることで、記録作成の負担を減らし、患者と向き合う時間の確保につなげました。
看護師の業務では、退院看護サマリーの作成や救急外来での問診、患者リストの作成、多職種カンファレンスの記録、申し送り記録などにも活用されています。
記録作成は、勤務後の残業や精神的な負担につながりやすい仕事の一つです。
AIを取り入れることで、情報共有の質を保ちながら、看護師が本来のケアに集中しやすくなります。
【トラブル防止】AIによるリスク予測
HITO病院では、電子カルテに蓄積された看護記録をAIが解析し、入院患者の転倒・転落リスクを予測する仕組みを導入しています。
従来はアセスメントシートを用いてリスク評価を行なっていました。
ただ、患者数の増加に伴い、優先度の高い患者を見落としてしまう課題がありました。
導入後は、看護記録の情報をもとに転倒・転落リスクを可視化し、病棟スタッフがアラートを確認し、多職種カンファレンスなどを通じて患者ごとの対策を検討します。
転倒・転落は患者の状態悪化や入院期間の長期化につながるため、AIを活用してリスクの高い患者を早期に把握し、インシデント防止につなげています。
看護現場でのAI活用事例については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:看護現場のAI活用事例7選!メリット・デメリット・導入手順まで徹底解説
【問診支援】AI問診導入
浦添総合病院では、AI問診を導入し、業務の効率化と診療の質向上に取り組んでいます。
従来は、患者が紙の問診票に記入し、看護師が追加で聞き取りを行ない、内容をカルテへ記載する必要がありました。
こうした流れにより、看護師の業務負担が増えるだけでなく、医師がカルテ記載を待つ時間も発生していました。
導入後は、患者がスマートフォンやタブレットで回答した内容をもとに、症状に応じた質問を自動で行ないます。
回答内容は医師や看護師が確認しやすい形で整理されるため、追加問診や転記作業の負担軽減が可能です。
事前に情報を整理できるため、診察前の情報共有もスムーズになり、患者の待ち時間削減や院内全体の業務効率化にもつながっています。
看護AIの導入に不安がある場合は外部支援の活用がおすすめ
看護現場でAIを活用したいと考えていても、自院だけで進めるのが難しい場合もあります。
AIを導入するには、ツール選定だけでなく、業務整理やワークフローの構築、運用ルールの作成、スタッフ教育なども必要です。
無理に院内だけで進めようとせず、必要に応じて外部支援を活用することも検討しましょう。
自院だけでAI導入を進めるのは負担が大きい
AI導入は、単にツールを契約するだけでは完了しません。
導入前には、次のような項目を整理する必要があります。
- どの業務を効率化するのか
- 誰がAIを利用するのか
- どの情報を入力してよいのか
- 出力結果を誰が確認するのか
特に看護現場では、日々の業務が忙しく、現場スタッフだけで導入準備や運用設計まで行なうのは大きな負担になりがちです。
AIの専門知識がなくても導入支援を受けられる
外部支援を活用すれば、AIの専門知識や最新動向に詳しくなくても、導入に向けた相談ができます。
たとえば「AIを使える業務」や「選ぶべきツール」などについてアドバイスを受けられます。
看護師や管理者がAI技術を深く理解していなくても、現場の課題を共有することで、自院に合った導入方法を検討しやすくなります。
業務実態に合わせたAIワークフローを構築できる
AIを現場で定着させるためには、現場の運用に合わせたワークフロー設計が欠かせません。
看護現場では、患者情報を直接扱う業務だけでなく、院内の問合せ対応やマニュアル検索、資料作成などの周辺業務からAIを活用する方法もあります。
現場の流れに合わせてAIを導入することで、日常業務にも無理なく取り入れられます。
セキュリティ面を確認しながら進められる
医療・看護現場でAIを活用する場合、セキュリティや個人情報の取り扱いは慎重に確認する必要があります。
患者情報や看護記録を扱う可能性があるため、便利なAIツールを導入する際は、情報管理や運用ルールの整備が欠かせません。
導入前には、次のような項目を確認しておきましょう。
- AIへ入力できる情報の範囲
- 患者情報を扱う業務と扱わない業務の切り分け
- スタッフごとのアクセス権限
- 出力結果を確認する担当者
- トラブル発生時の対応フロー
「NEO assistant」では、業務整理からAIワークフローの構築、運用まで支援しています。
セキュリティ対策や運用体制も含めて導入を進めたい場合は、現場の業務内容に合わせた活用方法をご提案しています。
AI活用は看護師が患者ケアに集中するための手段
AIは、看護現場の業務効率化や医療安全の向上を支えるツールとして活用が進んでいます。
看護記録や申し送り、問診、リスク予測、院内情報の整理などにAIを活用することで、業務効率化や医療安全の向上に期待できます。
特に、看護現場では以下のような業務でAI活用が期待されています。
- 看護記録や申し送りの効率化
- 問診業務の負担軽減
- 転倒・転落リスクの予測
- 患者の見守りや状態把握
- 院内マニュアルや情報共有の効率化
ただし、AIを導入する際は、個人情報、医療情報の取り扱い、AIの判断精度、責任の所在、システム障害時の代替運用などにも注意が必要です。
ツールを導入するだけでなく、看護現場に合った運用ルールや確認体制を整えることが大切です。
「NEO assistant」では、業務整理からAIワークフローの構築・運用までサポートしています。
看護現場に合わせたAI活用をご検討の際は、お気軽にご相談ください。

