公開日 2026.09.25更新日 2026.09.25

間接部門の引き継ぎ|後任がいないときの進め方と業務の残し方

「経理の担当者が来月で辞めるのに、後任の目処が立っていない」「総務を一人で回していた人が抜けたら、何が止まるのか誰も分かっていない」。

このような状況にある経営者や管理部門長の方に向けて、本記事をお届けします。

一般的な引き継ぎ記事は「後任者が決まっていること」を前提に手順を説明していますが、実際に多くの中小企業が詰まるのは、まさにその「後任者の決定」です。

そこで本記事では、後任がいない前提で引き継ぎを進める方法を最後までご紹介します。

難しさの理由、5つのステップ、後任がいない場合の3つの選択肢、外注への懸念への回答、部門別の注意点、そして引き継ぎを発生させない体制づくりまでを扱います。

結論を先にお伝えすると、最初に手をつけるべきは「止まると困る業務」の特定です。

支払いや給与計算のように、遅延がそのまま経営リスクに直結する業務から順に、手順と期限を形にして残していきます。

間接部門の引き継ぎが特に難しい3つの理由

  • 1業務1名体制で、社内に引き継ぎ先となる担当者がいない
  • 年に1回しか発生しない業務があり、引き継ぎ期間中に一度も出てこないことがある
  • 手順が言語化されておらず、資料が個人のPCやメールボックスに散在している

営業や製造の現場と違い、間接部門の引き継ぎには特有の難しさがあります。

ここでは代表的な3つの理由を見ていきます。

1業務1名体制で、代わりに知っている人がいない

営業や製造の現場では、同じ業務を複数人が分担していることが多いですが、間接部門ではそうはいきません。

中小企業では経理担当が1名、総務担当が1名という体制も珍しくなく、引き継ぎ先となる社内の他の担当者がそもそも存在しないケースが多く見られます。

いわゆる「一人経理」「ひとり総務」の状態です。

この場合、退職者本人が抜けた瞬間に、業務のやり方を知る人が社内からいなくなってしまいます。

年に1回しか発生しない業務がある

間接部門には、年末調整や算定基礎届、決算、法定調書の提出、労働保険の年度更新、社会保険の月額変更届といった、年に一度しか発生しない業務が数多くあります。

引き継ぎ期間がたまたま数か月であっても、その期間中に一度もこうした年次業務が発生しないことは十分にあり得ます。

口頭での説明だけでは、実際にその業務が発生したときに再現できません。

この点は、後ほどご紹介する「年間カレンダーを作る」というステップにつながります。

手順が言語化されておらず、資料が個人のPCにある

株式会社エイトレッドが2025年7月17日〜18日に実施した「バックオフィス業務におけるAI活用に関する実態調査」(対象は「バックオフィス業務に携わりDX推進を行っている」方110名、複数回答)では、57.3%が「特定の人しかわからない業務がある」を課題として挙げています。

有効回答110名と小規模なサンプルではありますが、属人化が現場に共通する課題であることがうかがえます。

手順書そのものが存在しないだけでなく、様式データやパスワード、取引先とのやり取りの履歴といった情報が、退職者個人のパソコンやメールボックスに散在していることも珍しくありません。

業務の属人化を解消する具体的な方法については、属人化を解消する方法でも詳しく解説しています。

引き継ぎの進め方(5ステップ)

ここからは、実際に引き継ぎを進める際の5つのステップをご紹介します。

①業務の棚卸しと優先順位付け

まずは「その業務が止まるとどうなるか」という観点で優先順位をつけます。

支払い、給与計算、社会保険関連の手続き、税務申告など、遅延がそのまま経営リスクに直結する業務を最優先に据えてください。

業務名、頻度、所要時間、期限、関係先の5つの項目で一覧化しておくと、後の工程がスムーズになります。

業務の棚卸しの具体的な進め方は、業務の無駄を見つける方法も参考になります。

②年間カレンダーを作る

引き継ぎ期間中に発生しない年次業務を取りこぼさないために、12か月分のカレンダーに業務を配置していきます。

月次で発生する締め・支払い・給与計算、四半期ごとの業務、そして決算・年末調整・算定基礎届・労働保険の年度更新といった年次業務を書き出し、それぞれ「いつ・誰に・何を提出するか」まで残しておきます。

このステップは最も見落とされやすく、最も事故につながりやすい部分ですので、時間をかけて丁寧に行ってください。

間接部門の年間カレンダー(雛形)※3月決算の企業を想定した例です。

毎月共通で発生する業務(月次の締め・支払い・請求・給与計算・社会保険料の納付)は各月に共通するため、表には主に年次・季節業務を記載しています。

自社の決算月・締め日・提出先に置き換えてご利用ください。

月 経理・財務 人事・労務 総務・情報システム
1月 法定調書合計表の提出、償却資産申告(いずれも1月31日期限) 給与支払報告書の提出(1月31日期限) 年度末に向けた契約更新対象の洗い出し
2月 決算に向けた残高確認・棚卸しの準備 ― 次年度の備品・ライセンス予算の確認
3月 決算期末の締め(3月決算の場合) 4月入社者の入社手続きの準備 新年度分のアカウント発行・端末準備
4月 決算業務(棚卸・残高確認・監査対応) 入社手続き、社会保険・雇用保険の資格取得届 アカウント発行、貸与端末の設定
5月 法人税・消費税の申告と納付(3月決算の場合は5月末が期限) ― ―
6月 ― 労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日)、住民税の特別徴収額の切り替え 株主総会に伴う各種手続き
7月 ― 算定基礎届の提出(7月10日期限)、労働保険年度更新の提出期限 ―
8月 ― ― 夏季休暇期間の連絡・対応ルールの周知
9月 上期の締め 定時決定による標準報酬月額の改定を反映(9月分から適用) ―
10月 ― 年末調整書類の配布準備 ―
11月 ― 年末調整書類の回収と内容確認 年末年始の運用・連絡体制の確認
12月 年末の支払スケジュールの調整 年末調整の計算、源泉徴収票の作成 ―

③手順書を作る(完璧を目指さない)

退職までの時間は限られているため、すべてを網羅しようとするより、優先度の高い業務から手をつけることが重要です。

画面録画や普段のチャットのやり取りをそのまま資料として残すだけでも、口頭説明だけに頼るより再現性は高まります。

マニュアル作成そのものを外部に依頼するという方法もあります。

マニュアル作成会社の比較はマニュアル作成代行会社の比較、業務標準化の進め方は業務プロセスの標準化をご覧ください。

④並走期間を設ける

手順書を渡すだけでは、実際の業務がスムーズに回るとは限りません。

引き継ぐ側が実際に1サイクル業務を回し、退職者が横についてフォローする期間を設けてください。

月次業務であれば最低1か月、可能であれば2サイクル分は確保したいところです。

この期間は、退職者と後任者の双方に二重の工数がかかることも見込んでスケジュールを組んでおきましょう。

⑤退職後の質問窓口を決めておく

退職後に質問できるかどうかを、期間と方法を含めて事前に合意しておくことも欠かせません。

個人の善意だけに頼ってしまうと、連絡がつかなくなったときにトラブルになりやすいため、業務委託契約などの形にしておくことをおすすめします。

引き継ぎ5ステップの全体像

ステップ やること 目安・ポイント
①業務の棚卸しと優先順位付け 業務名・頻度・所要時間・期限・関係先の5項目で一覧化し、「止まると困る業務」から順位づけする 支払い・給与計算・社会保険・税務申告を最優先に置く
②年間カレンダーを作る 月次・四半期・年次の業務を12か月分のカレンダーに配置し、「いつ・誰に・何を提出するか」まで残す 棚卸しと並行して着手。最も抜けやすく、最も事故につながりやすい
③手順書を作る(完璧を目指さない) 優先度の高い業務から手順書化する。画面録画やチャットの履歴もそのまま資料として残す 網羅より優先度順。マニュアル作成そのものを外部に依頼する方法もある
④並走期間を設ける 引き継ぐ側が実際に1サイクル業務を回し、退職者が横についてフォローする 月次業務なら最低1か月、可能であれば2サイクル。二重の工数がかかる点も見込む
⑤退職後の質問窓口を決めておく 退職後に質問できる期間と方法を事前に合意する 個人の善意に頼らず、業務委託契約などの形にしておく

後任がいない場合の3つの選択肢

  • ①採用する:募集から入社までに時間がかかり、退職日に間に合わないことがある
  • ②社内で兼務する:短期的には成立するが、手順書がないと属人化が別の担当者へ移動するだけになる
  • ③外部のチームに引き継ぐ:採用を待たずに着手でき、チームで受けるため担当者の交代でも業務が止まりにくい

ここまでの5ステップは、後任者が決まっていることを前提としています。

しかし実際には、退職日までに後任が決まらないケースが少なくありません。

その場合に検討したい3つの選択肢をご紹介します。

①採用する

正社員の採用は募集から入社までに時間がかかり、退職日に間に合わないことも多いのが実情です。

帝国データバンク『「雇用過不足」に関するアンケート調査』(2026年4月調査、有効回答1万538社)では、正社員が不足している企業は50.6%にのぼります。

採用コストも軽視できません。

リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」によれば、中途採用1人あたりの平均コストは103.3万円(2019年度実績。以降は同項目が非公表)です。

人手不足が業務に与える影響は、こちらの記事でも解説しています。

②社内で兼務する

他部門の担当者に兼務してもらう方法です。

短期的には成立しやすい一方で、手順書がないまま業務だけを渡してしまうと、属人化の問題が別の担当者に移動するだけになってしまいます。

兼務させる側の既存の業務量もあわせて見直さないと、次の退職者を生む原因になりかねません。

コア業務とノンコア業務の切り分け方は、コア業務とノンコア業務の考え方をご参照ください。

③外部のチームに引き継ぐ

採用活動を待たずに着手できる選択肢が、外部のチームへの引き継ぎです。

実際にベースフード株式会社様では、少数精鋭で急成長する過程において新たに正社員を雇用するのではなく、CASTER BIZ assistantを導入してリサーチや発注業務を外部チームへ移管・代行することで、採用コストや引き継ぎの負担を抑えながら売上規模の急拡大に対応しました。

・参照事例: ベースフード株式会社様|オンラインアシスタントの導入事例

「CASTER BIZ assistant」は月30時間からバックオフィス業務をチームで受託するサービスです。

個人ではなくチーム体制で受けるため、担当者1名の休職や交代があっても業務が止まらず、最短3営業日で開始できます。

例えば株式会社TVer様では、営業メンバーが月20時間費やしていた請求データ突合や資料作成などのバックオフィス業務をチームへ移管・代行したことで、コア業務に専念でき売上倍増を実現しました。

・参照事例: 株式会社TVer様|オンラインアシスタントの導入事例

ただし契約期間や最低利用期間はプランによって異なるため、開始前に契約条件をあわせてご確認ください。

AIの運用ごと任せたい場合は、1か月契約のTrialプランがある「CASTER NEO Assistant」も選択肢です。

重要なのは「人を外注に置き換える」ことではなく、「後任が決まるまで業務を止めないこと」が目的だという点です。

詳細はサービス内容、料金プランをご覧ください。

「外注すると社内にノウハウが残らない」への回答

外部への引き継ぎを検討する際、多くの方が「外注すると社内にノウハウが残らなくなるのでは」と懸念します。

ノウハウが残らなくなるのは、業務設計や手順書を渡さないまま丸投げした場合です。

むしろ外注のために手順書を作る作業そのものが、個人の頭の中にあった業務を可視化し、社内の資産として残す作業になります。

さらに、契約終了時に手順書とデータが返却される取り決めを最初に結んでおけば、必要なときに内製化へ戻すこともできます。

外注の是非についてはアウトソーシングのデメリットやこちらの記事もご確認ください。

部門別に見る引き継ぎの注意点

  • 経理・財務:月次の締めと支払いのサイクル、会計システムの権限、証憑の保管場所、税理士との窓口
  • 人事・労務:社会保険・雇用保険の提出期限、給与計算の締め日と支給日、社会保険労務士との窓口
  • 総務:契約書の更新期限、備品・設備の管理台帳、社内問い合わせの一次対応、来客・郵便の運用
  • 情報システム:アカウントの発行・停止権限、ライセンスの契約更新日、管理者パスワードの引き渡し手順

間接部門といっても、部門ごとに引き継ぎで押さえるべきポイントは異なります。

ここでは代表的な4部門の注意点を簡潔にまとめます。

経理・財務

月次の締めと支払いのサイクル、銀行口座や会計システムの操作権限、証憑類の保管場所、顧問税理士との窓口の引き継ぎが必要です。

経理業務の引き継ぎをより詳しく知りたい方は、経理特化の情報を発信するオンライン経理ならCASTER BIZ accountingもあわせてご覧ください。

人事・労務

社会保険・雇用保険の手続きは提出期限が定められているため、届出の種類ごとに期限と提出先まで書き出しておきます。

あわせて給与計算の締め日と支給日、社会保険労務士との窓口、年次業務をどこまで自部門で担当するかの範囲を引き継いでおく必要があります。

詳しくは人事労務の課題はプロにお任せできるCASTER BIZ HRや人事労務サービスの活用方法もご参照ください。

総務

契約書の更新期限、備品や設備の管理台帳、社内からの問い合わせへの一次対応、来客・郵便対応の運用ルールを引き継いでおきましょう。

総務業務のアウトソーシングについては総務アウトソーシングの活用もご覧ください。

情報システム

アカウントの発行・停止に関する権限、各種ライセンスの契約更新日、外部ベンダーとの窓口、管理者パスワードの引き渡し手順を確実に残しておく必要があります。

特にパスワードや権限まわりは、引き継ぎ漏れがセキュリティリスクに直結するため、優先度を高く設定してください。

引き継ぎを毎回発生させない体制

  • 個人ではなくチームで業務を受ける形にして、引き継ぎというイベント自体を起きにくくする
  • 手順書は作って終わりにせず、業務が変わるたびに更新される運用にして組織の資産にする

ここまでの内容は、目の前の引き継ぎを乗り切るための対処法です。

最後に、引き継ぎというイベント自体を発生させにくくする、構造面での対策をご紹介します。

個人ではなくチームで受ける体制で属人化を根本解消

担当者1名に業務が張り付いている体制では、退職や異動のたびに同じ問題が繰り返されます。

オンラインアシスタントを「チーム体制」で活用する場合も、業務の切り出しと手順の共有を前提にすることで、可視化と標準化が導入の過程で進み、属人化が起きにくい状態に近づけられます。

実例として、freee株式会社様では新規事業立ち上げ時に担当者1名へ業務が集中し属人化が課題になっていましたが、CASTER BIZ assistant導入により可視化・マニュアル化とチーム代行を進め、1名体制のままで事業を軌道に乗せています(導入事例:freee株式会社様)。

三井不動産株式会社様も、システム運用やデータ処理の属人化をマニュアル作成とチーム代行の組み合わせで解消しています(導入事例:三井不動産株式会社様)。

「担当者に引き継ぐ」のではなく「マニュアル化されたチーム体制に業務を組み込む」ことで、引き継ぎ自体が発生しにくい組織になります。

これは精神論ではなく、サービスの仕組みによって実現されるものです。

詳細はCASTER BIZ assistantをご覧ください。

手順書を資産として残す運用

手順書は作成して終わりではありません。

業務内容が変わるたびに更新される運用にして初めて、組織の資産として機能します。

更新の担当者と頻度をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

業務標準化の進め方については、業務プロセスの標準化もあわせてご覧ください。

まとめ|まず「止まると困る業務」から手をつける

間接部門の引き継ぎが難しいのは、1業務1名体制、年次業務の存在、属人化という3点に理由があります。

5ステップのうち特に見落とされやすいのが年間カレンダーの作成です。

後任が決まらない場合は、採用・兼務・外部チームの3択があり、外部チームは最も早く着手できます。

さらに個人ではなくチームで受ける体制にすれば、引き継ぎ自体が発生しにくくなります。

間接部門とは何か、その役割や課題については別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

後任が決まらないうちに、業務を止めないために

後任の採用を待っている間も、支払いや給与計算、社会保険の手続きは期限どおりにやってきます。

まずは「止まると困る業務」から、チームで受けられる形に切り出すことをご検討ください。