間接部門のコスト削減|削ってはいけない業務と正しい順番

「間接部門のコストを下げたいが、どこから手をつけるべきか分からない」「人員を削るしかないのか」――このような検討段階にいる経営者・経営企画・管理部門長の方に向けた記事です。
結論から言うと、削減の順番は「やめる→減らす→変える→渡す→最後に人員を見直す」です。
人員削減はこの5段階の最後であり、その前に4つの段階があることをまずお伝えします。
実際に、株式会社ウィルゲート様のようにWeb入稿・データ収集代行で編集部工数を半減させた事例や、Crevo株式会社様のように請求受発注データの突合代行で経理業務の高速化を実現した事例もあり、単なる経費削減にとどまらない効果が報告されています。
本記事では、用語の整理からコストの構成、失敗パターン、正しい順番、固定費の変動費化、削ってはいけない業務まで順に解説します。
「間接部門のコスト削減」と「間接費の削減」は別の話
まず言葉を整理します。
「間接費」は原価計算基準に定義される会計上の概念で、間接材料費・間接労務費・間接経費に分類され、本来は製造原価の文脈(製造間接費)で使われる言葉です。
「販管費」は企業会計原則および財務諸表等規則第84条に定義され、原価計算基準では期間原価とされます。
一方で「間接部門」には会計基準・法令上の定義はなく、実務で使われている言葉にすぎません。
つまり本記事が扱うのは、間接費という会計項目ではなく、「間接部門という組織を維持するために発生しているコスト」です。
この整理をしないまま「間接費を削る」方法を探しても、経理の小口現金や消耗品といった目に見える経費にしか行き着きません。
本当に効いてくるのは、間接部門を維持するための人員固定費・採用費・業務工数をどうコントロールするかという視点です。
実際に、少数精鋭で急成長する中で自動化できない雑務が残り、間接部門の人員を追加せざるを得なくなるリスクを抱えていたベースフード株式会社様は、CASTER BIZ assistantを導入し、リサーチや発注代行などを外部化することで固定人件費を抑えたまま事業拡大を実現しました。
また株式会社TVer様では、営業メンバーがバックオフィス作業に月20時間を費やしていたところ、請求データの突合や資料作成を外注化し、営業がコア業務に専念できる体制を作ったことで商談数が増え、売上倍増につながっています。
間接部門のコストは何で構成されているか
間接部門のコストは、消耗品費や交際費のような目に見える経費よりも、人件費が大部分を占める構造になっています。
まずは積み上げ形式で、その人件費にどのような要素が積み上がっているのかを見ていきましょう。
- 人件費が大半を占める構造:給与に会社負担の法定福利費が約15%上乗せされる
- 見えにくい「隠れコスト」:採用費・教育費に加え、引き継ぎや退職に伴う工数も発生する
人件費が大半を占める構造|給与に法定福利費約15%が上乗せされる
会社が負担するのは給与だけではありません。
給与に、会社負担分の法定福利費が上乗せされます。
令和8年度の料率で試算すると、協会けんぽ(東京都9.85%の労使折半=4.925%)、子ども・子育て支援金(0.23%の折半=0.115%)、厚生年金(18.30%の労使折半=9.15%)、雇用保険(事業主負担8.5/1,000)、労災保険(その他の各種事業3/1,000)の合計で、およそ給与の15%になります。
40〜64歳の従業員は介護保険料率1.62%の折半分0.81%が加わり、約16%です。
※この合算は編集部による試算であり、東京都・一般の事業・40歳未満を前提としています。
実際の負担率は都道府県や事業の種類、従業員の年齢によって異なるため、最新の料率は協会けんぽや日本年金機構、厚生労働省の公表資料でご確認ください。
固定費・変動費の考え方、1人あたり人件費の試算は以下の記事でも解説しています。
見えにくい「隠れコスト」|採用・教育・引き継ぎ・退職
給与と法定福利費の他にも、見えにくいコストがあります。
就職みらい研究所「就職白書2020」によると、新卒採用の1人あたり平均コストは93.6万円、中途採用は103.3万円(いずれも2019年度実績)です。
教育コストは、厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」でOFF-JT費用が1人あたり2.0万円(2024年度実績)、産労総合研究所調査では教育研修費用が1人あたり36,036円(2024年度実績)と報告されています。
採用・教育コストは年々変動するため、最新データもあわせてご確認ください。
コスト削減で失敗する典型パターン
順番を誤ると、コスト削減はかえってコストを増やすことがあります。
ここでは、間接部門のコスト削減でよく見られる典型的な失敗パターンを3つ紹介します。
いずれも、後段で示す「正しい順番」を踏まずに着手した場合に起きやすいものです。
- 人員を削って、残った人に業務が集中する
- 経費だけ削って、業務量は変わらない
- 削減した結果、退職が出て採用コストが増える
人員を削って、残った人に業務が集中する
業務そのものは減らないまま人員だけを削ると、残った担当者か直接部門が業務を引き受けることになります。
前述の株式会社TVer様のオンラインアシスタントの事例のように、営業メンバーがバックオフィス業務に「月20時間」も圧迫されるような『見えないコスト・売上機会の損失』が発生しやすくなります。
同社では請求データ突合や資料作成を外部化し、営業がコア業務に専念できる体制を構築したことで商談数が増え、売上倍増を達成しました。
総労働時間は変わらず、売上を作る時間が減ってしまうのです。
切り分け方はコア業務とノンコア業務の違いとは?分類の仕方を解説でも解説しています。
経費だけ削って、業務量は変わらない
コスト削減というと、消耗品や交際費、備品、光熱費など目に見える経費から手をつけがちです。
しかし前章で見たとおり、間接部門のコストの大半を占めるのは人件費です。
目に見える経費だけをいくら削っても、コスト全体に占める割合が小さいため、実際の削減インパクトは限定的なものにとどまります。
担当者の労力に見合った成果が出にくく、途中で取り組みそのものが失速してしまうケースも少なくありません。
削減した結果、退職が出て採用コストが増える
業務量を変えないまま人員だけを減らすと、残った担当者に負荷が集中し、離職につながることがあります。
離職が発生すれば、前章で見た採用費・教育費に加えて、引き継ぎのための工数も再び発生します。
人員削減によって浮いたはずのコストが、採用コストという別の形で戻ってくる構図になりやすい点に注意が必要です。
特定の担当者に業務が偏り属人化している場合、この失敗は起きやすくなります。
属人化を防ぐ方法はこちらの記事で解説しています。
削減の正しい順番

ここからが本記事の中核です。
間接部門のコスト削減は、上記の5段階の順番で進めます。
「渡す」、つまり外部化は4段階目であり、人員の見直しは最後に来ることがポイントです。
この順番を飛ばしていきなり④や⑤から着手すると、前章で見た失敗パターンに陥りやすくなります。
- ①やめる:そもそも不要な業務を止める
- ②減らす:頻度と粒度を落とす
- ③変える:手順とツールを見直す
- ④渡す:外部化して固定費を変動費に変える
- ⑤最後に人員を見直す
①やめる|そもそも不要な業務を止める
惰性で続いている日次・週次の報告書、誰も見ていない集計資料、参加者が形だけ集まる形骸化した会議など、止めても誰も困らない業務は、どの組織にも一定量あります。
効率化やツール導入を検討する前に、まずはこうした業務を洗い出し、率直に「これは本当に必要か」を問い直すところから始めます。
②減らす|頻度と粒度を落とす
完全には止められない業務も、頻度や粒度を落とせば工数は下がります。
週次で行っていた報告を月次にする、すべての項目をチェックしていたものを主要項目だけに絞るといった調整が該当します。
「やめる」ほど思い切れない業務は、まずこの段階で軽くすることを検討します。
③変える|手順とツールを見直す
やめる・減らすだけでは対応しきれない業務は、SaaSやAIツールの導入によって手順そのものを見直します。
手作業でのデータ入力や転記作業をシステム連携に置き換えるだけで、工数が大きく下がるケースは少なくありません。
バックオフィス効率化の具体的な進め方はこちらの記事で解説しています。
④渡す|外部化して固定費を変動費に変える
①〜③を行ったうえで残った業務を外部に渡します。
この順番を守らないと、非効率な業務をそのまま外注してしまい、費用だけが増える結果になります。
オンラインアシスタントをご利用しているベースフード株式会社様は、間接部門の人員を新たに採用して固定費化するのではなく、必要な業務だけを外部に渡すことで、最小限の固定費のまま急成長を実現しています。
⑤最後に人員を見直す
①〜④を経て、実際に社内に残る業務量が下がって初めて、人員構成の見直しが現実的な選択肢になります。
この順番を逆にして、業務量を減らす前に人員だけを見直してしまうと、前章で見た「人員を削って残った人に業務が集中する」失敗パターンに逆戻りしてしまいます。
固定費を変動費に変えるという考え方
前章の④「渡す」を実際に検討する際、判断材料になるのが固定費の変動費化という考え方です。
ここでは正社員を採用する場合と、外部リソースを活用する場合のコストを比較してみます。
- 正社員1名を採用する場合の総コスト:給与に法定福利費・採用費・教育費・設備/ライセンス費が積み上がる
- 外部リソースで置き換えた場合の比較:必要な範囲だけを切り出して依頼できる
- 繁閑差がある業務ほど効果が大きい理由:ピークに合わせて人員を抱えると閑散期に余剰が生じる
正社員1名を採用する場合の総コスト
正社員を1名採用する場合、給与に加えて法定福利費(約15%)、採用費、教育費、設備・ライセンス費が積み上がります。
以下はモデルケースです。
| 費目 | 目安 |
|---|---|
| 給与(年収) | 400万円 |
| 法定福利費(約15%) | 60万円 |
| 採用費(新卒目安) | 93.6万円 |
| 教育費(年間目安) | 数万円〜 |
| 設備・ライセンス費 | 数万円〜 |
※あくまでモデルケースであり、実在企業の数値ではありません。
前提は年収400万円、令和8年度の法定福利費率、採用費は就職みらい研究所「就職白書2020」(2019年度実績)です。
なお、教育費および設備・ライセンス費の「数万円〜」は出典・算出根拠を特定できていない目安値のため、実際の金額は自社の実績にもとづいてご確認ください。
外部リソースで置き換えた場合の比較
同じ業務量を外部に出した場合の費用も見てみましょう。
CASTER BIZ assistantは月30時間からのプラン制で、必要な範囲を切り出して依頼できます。
料金の詳細はプランページでご確認ください。
実際に株式会社ピアラ様はExcel集計やグラフ化代行を依頼し、分析作業の準備時間を大幅短縮させています。
またCrevo株式会社様も請求受発注データの突合・確認代行を外注し、経理業務の高速化につなげています。
・参照事例: 株式会社ピアラ様|オンラインアシスタントの導入事例
| 比較の観点 | 正社員1名を採用する場合 | 外部リソースに置き換える場合 |
|---|---|---|
| 費用の内訳 | 給与(年収400万円)+法定福利費(約15%=60万円)+採用費(新卒目安93.6万円)+教育費(数万円〜)+設備・ライセンス費(数万円〜) | 月30時間からのプラン制。必要な範囲を切り出して依頼でき、料金の詳細はプランページで確認できます。 |
| 費用の性質 | 業務量にかかわらず発生し続ける固定費 | 依頼する業務量に応じて調整できる変動費 |
| 繁閑差への対応 | ピークに合わせて人員を抱えると、閑散期には人員が余る | 必要な分だけ依頼でき、繁閑の波を吸収しやすい |
| 前提・注記 | モデルケース(年収400万円、令和8年度の法定福利費率、採用費は就職みらい研究所「就職白書2020」=2019年度実績)。教育費・設備費は出典を確認できていない目安値 | 料金は公式プランページの最新情報を要確認 |
繁閑差がある業務ほど効果が大きい理由
月末月初の請求処理、決算期の対応、繁忙期の問い合わせ対応など、業務が特定の時期に偏る場合、そのピークに合わせて人員を抱えてしまうと、閑散期には人員が余ってしまいます。
正社員は業務量にかかわらず固定費が発生し続けるため、繁閑差が大きい業務ほど無駄が生じやすくなります。
必要な分だけ依頼できる外部リソースの形であれば、この繁閑の波を吸収しやすくなります。
削ってはいけない業務

ここまで削減の順番を解説してきましたが、間接部門の業務の中には、コストだけを見て削ってはいけないものもあります。
品質や従業員満足度といった観点にとどまらず、リスクの観点から具体的に見ていきます。
- 法令対応・支払・労務:止まると事業が止まる
- 品質を落とすと信用コストに跳ね返るもの
法令対応・支払・労務|止まると事業が止まる
社会保険手続き、給与の支払い、税務申告、契約書の管理などは、いずれも期限や正確性が法律で定められている業務です。
担当者を減らしすぎたり、確認体制を簡略化しすぎたりして遅延や誤りが起きると、法的なリスクや取引先からの信用低下に直結します。
これらの業務は削減の優先度を下げ、確実に実行できる体制を維持する必要があります。
品質を落とすと信用コストに跳ね返るもの
請求金額の誤り、問い合わせ対応の遅れ、契約書のチェック漏れといった品質低下は、短期的に見える削減額よりも、後から発生する対応コストや信用の毀損のほうが大きくなりがちです。
取引先からの信頼を取り戻すには時間がかかるため、目先のコストだけで判断しないことが重要です。
まとめ|削減の順番を守れば、人を減らさずにコストは下げられる
本記事では、間接部門のコスト削減について解説しました。
ポイントは4つです。
1つ目は、「間接部門のコスト」と「間接費」は別の概念であること。
2つ目は、コストの大半は人件費であり、給与に約15%の法定福利費が上乗せされること。
3つ目は、削減の順番は「やめる→減らす→変える→渡す→人員見直し」であること。
4つ目は、法令対応や品質に直結する業務など、止められない業務があることです。
まずは自社のコスト構造を、この順番に沿って見直すところから始めてみてください。