間接部門のKPIはなぜ機能しないのか|設定の手順と職種別の例

「間接部門の目標を数字で出せと言われたが、売上がないのにどう表現すればいいのか」
「KPIを設定したが、翌期には誰も見ていない」
このような状態にある管理部門長や人事・経営企画の担当者に向けて書きました。
指標の例を並べるだけの記事にはしていません。
①KPIが機能しない構造、②設定前に業務量を測る手順、③職種別の例、④設定してはいけないKPI、⑤未達だったときの打ち手まで、実務で使える内容を一貫して解説します。
読み終えたときには、自部門でまず何から着手すべきかが見えているはずです。
なぜ間接部門のKPIは機能しないのか|3つの構造的な理由

間接部門のKPIが機能しない理由として、多くの記事は「成果が定量化しにくいから」と説明しますが、これは言い換えにすぎません。
実際には性質の異なる3つの構造的な理由が重なっており、それぞれ対処法が異なります。
まずはこの構造を分解します。
- 売上に紐づかず、成果が「起きなかったこと」として表れるため数えられない
- 業務量が可視化されておらず、目標値の前提となる現状値がそもそもない
- 数値化されると評価が下がると感じ、現場が測定そのものに抵抗する
売上に紐づかないため、成果が「起きなかったこと」になる
間接部門の成果は、「支払いが遅延しなかった」「労務トラブルが起きなかった」というように、何かが起きなかったことで表れます。
事象が発生しなかった以上、数として数えられません。
会計上も間接部門の費用は販管費として一括計上されることが多く、部門単位の費用対効果が見えにくい構造になっています。
売上が積み上がる直接部門とは、成果の見え方そのものが違うのです。
この違いを理解しないままKPIを設計すると、直接部門と同じ枠組みを無理に当てはめてしまい、現場との間にずれが生まれます。
関連記事:バックオフィス業務と事務の違いとは?効率化するための方法などを解説
業務量が可視化されておらず、そもそも現状値がない
KPIは現状値があって初めて目標値を置けるものです。
ところが間接部門は業務の種類が多く、誰が何にどれだけ時間を使っているかという記録がそもそも存在しません。
この状態で「30%削減」と置いても、分母となる現状の工数が分からず、達成の判定ができないのです。
数値目標が形式的な儀式になり、翌期には誰も見なくなります。
この課題は次章の測定手順で扱います。
数値化されると評価が下がる、という現場の抵抗
3つの理由のなかで、実務上もっとも大きな障壁になるのがこの現場の抵抗です。
業務量を数値化すると、「その業務にそんなに時間をかけていたのか」と問われる立場に変わります。
評価や人員査定に直結すると感じるほど、現場は正確な記録を出すことに抵抗します。
この抵抗を前提にせずKPIを導入すると、記録が正確に上がってきません。
対策は、「評価のためではなく、増員・外注の根拠を作るための測定である」という目的を、測定前に現場と共有しておくことです。
KPIを決める前に、業務量を測る
「業務を可視化しづらい」という課題認識で止めず、ここでは実際に測るための手順まで踏み込みます。
この手順を飛ばしてKPIだけを先に決めると、前章の「現状値がない」問題を繰り返すことになります。
業務の実態を数字で押さえることが、その後のすべての土台になります。
- 繁忙期と閑散期の両方を含む1〜2週間を15分単位で記録し、現状値を作る
- 記録するのは業務名・所要時間・発生頻度の3項目
- 測ると、部門時間のかなりの割合が転記・集計・照合・一次対応に消えていることが分かる
1〜2週間の工数記録で現状値を作る
業務量を測るために、全期間を記録する必要はありません。
繁忙期と閑散期の両方を含む1〜2週間を選び、15分単位で記録します。
月次・年次業務は別途カレンダーで洗い出して加算してください。
目指すのは完璧な精度ではなく、桁数が合っている程度の精度です。
細部にこだわりすぎると、記録作業自体が新たな負担になります。
精度は運用しながら高めていく前提で、まずは全体像をつかむことを優先してください。
参考:【経営戦略】成長を阻害する「業務のムダ」をコスト視点で洗い出す手法
記録すべき3項目(業務名/所要時間/発生頻度)
記録すべき項目は、業務名・所要時間・発生頻度の3つです。
これがあれば「月間工数=1件あたり時間×月間件数」で部門全体の工数を積み上げられます。
さらに「判断を伴うか」の1列を加えると、そのまま外注可否の仕分けに使えます。
判断を伴わない定型業務ほど、外部化や自動化の対象にしやすいためです。
表形式のテンプレートを用意し、記録者が迷わず入力できるようにしておくと運用が続きやすくなります。
測ってみると分かること
実際に測定すると、部門時間のかなりの割合が転記・集計・照合・一次対応といった定型業務に消えていることが分かります。
例えばCrevo株式会社様では、動画制作クリエイターの「請求受発注データの突合・確認」という定型作業を可視化して外部化することで、経理業務の高速化を達成しました。
・参照事例: Crevo株式会社様|オンラインアシスタントの導入事例
可視化できれば、KPIの置き場所、つまり削減対象が具体的に決まります。
逆に可視化を飛ばすと、実行段階で行き詰まります。
関連記事:業務のアウトソーシングとは?派遣や外注との違い・種類・メリットやデメリットを解説
職種別のKPI例
職種別のKPI例を、指標・測り方・注意点の3つの視点で整理します。
指標そのものだけでなく「どう測るか」まで示すことで、自部門にそのまま持ち込める形にしています。
- 経理・財務:月次決算の早期化日数、請求書処理の1件あたり時間、支払・入金の誤り件数
- 人事・労務:入社手続きのリードタイム、勤怠締めにかかる時間、問い合わせの一次回答時間
- 総務:社内問い合わせの件数と一次解決率、契約書確認のリードタイム、備品・設備関連の対応時間
- 情報システム:アカウント発行のリードタイム、一次問い合わせの解決率、資産棚卸しの精度
経理・財務
経理・財務では、月次決算の早期化日数、請求書処理の1件あたり時間、支払・入金の誤り件数などが指標になります。
早期化日数は締め日から確定までの営業日数で測定でき、誤り件数は修正仕訳の発生回数で代用できます。
経理領域をさらに深く知りたい方は、経理代行の専門サイトのCASTER BIZ accountingもご参照ください。
| 指標 | 測り方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 月次決算の早期化日数 | 締め日から確定までの営業日数 | — |
| 請求書処理の1件あたり時間 | 1件の処理にかかった時間を記録 | — |
| 支払・入金の誤り件数 | 修正仕訳の発生回数で代用 | 誤り件数そのものではなく代用値である点に留意 |
人事・労務
人事・労務では、入社手続きのリードタイム、勤怠締めにかかる時間、問い合わせの一次回答時間などが指標になります。
リードタイムは内定承諾から書類受領完了までの日数で測定し、一次回答時間は受付から最初の返信までの時間で記録します。
なお採用の充足率は採用部門のKPIとして切り分け、労務側と混同しないことが重要です。
| 指標 | 測り方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 入社手続きのリードタイム | 内定承諾から書類受領完了までの日数 | — |
| 勤怠締めにかかる時間 | 締め作業に要した時間を記録 | — |
| 問い合わせの一次回答時間 | 受付から最初の返信までの時間 | — |
| (共通) | — | 採用の充足率は採用部門のKPIとして切り分け、労務側と混同しない |
総務
総務では、社内問い合わせの件数と一次解決率、契約書確認のリードタイム、備品・設備関連の対応時間などが指標になります。
一次解決率は、他部署への転送なしにその場で回答できた割合として測定します。
問い合わせ対応の比重が大きい部署のため、スピードと解決率の両方を測る指標が中心になります。
| 指標 | 測り方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社内問い合わせの件数 | 受け付けた問い合わせを件数で計上 | — |
| 一次解決率 | 他部署への転送なしにその場で回答できた割合 | — |
| 契約書確認のリードタイム | 依頼受付から確認完了・返却までの営業日数 | — |
| 備品・設備関連の対応時間 | 依頼受付から対応完了までの時間(外部発注の待ち時間は除く) | — |
| (共通) | — | スピードと解決率の両方を測る指標が中心になる |
情報システム
情報システムでは、アカウント発行のリードタイム、一次問い合わせの解決率、資産棚卸しの精度などが指標になります。
リードタイムは申請から利用開始までの経過時間で測定します。
近年は情シスを「攻めの部門」として位置づける企業が増えており、コスト指標だけで測らない視点も必要です。
| 指標 | 測り方 | 注意点 |
|---|---|---|
| アカウント発行のリードタイム | 申請から利用開始までの経過時間 | — |
| 一次問い合わせの解決率 | 一次窓口で完了し、上位担当へ引き継がなかった割合 | — |
| 資産棚卸しの精度 | 台帳と実機を突合し、一致した件数の割合 | — |
| (共通) | — | 情シスを「攻めの部門」と位置づける企業も増えており、コスト指標だけで測らない視点も必要 |
設定してはいけないKPI|逆機能を起こす3つの型

ここからは、設定すると逆に組織を悪化させる「逆機能」を起こすKPIの型を取り上げます。
KPIは「達成できるかどうか」だけでなく、「達成しても意味がない、むしろ害になるものではないか」という視点で選ぶ必要があります。
- 残業削減KPI:業務量が変わらないまま残業時間だけを指標にすると、持ち帰り仕事やサービス残業に移るだけになる
- コスト削減KPI:短期の削減額を指標にすると、システム更新やセキュリティ対策など必要な投資まで止まる
- 処理件数KPI:件数を指標にすると、まとめれば1件で済む業務をあえて分割するなど「件数を作る」行動が生まれる
残業削減KPIが、持ち帰り仕事とサービス残業を生む
業務量が変わらないまま残業時間だけを指標にすると、記録されない持ち帰り仕事やサービス残業に業務が移るだけになります。
残業時間をKPIにするなら、業務量そのものの削減とセットでなければ成立しません。
実際に株式会社TVer様では、営業メンバーが抱えていた請求データ突合・資料作成など「月20時間のバックオフィス業務」を外部に移管して業務量そのものを削減し、商談数の増加によって売上倍増を実現しました。
・参照事例: 株式会社TVer様|オンラインアシスタントの導入事例
参考:残業削減の進め方
コスト削減KPIが、必要な投資を止める
短期のコスト削減額を指標にすると、システム更新やセキュリティ対策など、先送りすると後で大きなコストになる投資までもが止まってしまいます。
目の前の削減額を達成するために、必要な投資を見送る判断が現場で起きやすくなるためです。
間接部門のコスト削減は、目先の削減額だけでなく、中長期の投資判断とセットで評価する視点が欠かせません。
単年度の数字だけで評価する仕組みは、この逆機能を招きやすい点に注意してください。
関連記事:バックオフィスの効率化を成功させる5つのステップから解決方法までご紹介
処理件数KPIが、「件数を作る」行動を生む
処理件数や対応件数を指標にすると、まとめて処理すれば1件で済む業務をあえて分割するなど、指標のための行動が生まれます。
件数という数字を作ることが目的化していないか、定期的に点検する必要があります。
1件あたりの処理時間や、まとめ処理の割合もあわせて確認すると、この歪みに早く気づけます。
未達だったときに何をするか
KPIは設定して終わりではありません。
運用中に目標が未達だったときにどう動くかまで決めておいて、はじめて指標として機能します。
未達を放置すると、翌期以降もKPIは形骸化し続けます。
- 人員を据え置いたまま工数削減を求める、論理矛盾した構図になっていないかを点検する
- 未達の原因が「やり方」にあるのか「業務の量」にあるのかを切り分ける
- 量が原因なら、定型業務を外部に移してKPIの分母である社内工数そのものを削る選択肢がある
人員据え置きで工数削減KPIを課すのは、論理矛盾になっていないか
業務量が増えているのに人員は増やさず、さらに工数削減を求めるという構図は珍しくありません。
この場合、KPIは達成に向けた努力目標ではなく、最初から達成不能な数値として形骸化してしまいます。
未達が続く場合は、原因が「やり方」にあるのか「業務の量」そのものにあるのかを切り分ける必要があります。
急成長に伴い社内の庶務・経理雑務が急増した株式会社メルカリ様では、経理処理や慶弔手続きなどを外注化することで、正社員が本来のミッション(コア業務)に集中する組織文化と生産性を維持した実例があります。
・参照事例: 株式会社メルカリ様|オンラインアシスタントの導入事例
人員を増やせない局面でも、業務量そのものを動かすという選択肢は残されています。
KPI達成の手段として、外部にリソースを足すという選択肢
KPI未達の根本原因が「社内リソース不足による定型業務の逼迫」である場合、業務プロセスの見直しやSaaSツールの導入だけでは限界があります。
前章で可視化した工数を外部に移管し、KPIの分母である社内工数そのものを削るアプローチが有効です。
実際、間接部門・バックオフィス業務の肥大化に対し、CASTER BIZ assistantを活用してKPI達成や工数削減を実現した例があります。
評価制度の見直しやツールの導入は、業務の「やり方」を変える打ち手です。
一方で、可視化した定型業務をそのまま外部の実務チームに切り出せば、KPIの分母である社内工数そのものを動かせます。
キャスターは月30時間単位で経理・人事・事務などの実務チームを提供しているため、測って切り出した業務をそのまま任せられます。
AIの運用まで任せたい場合は、CASTER NEO Assistantという選択肢もあります。
まとめ|測ってから置く、置いたら運用する
本記事では、間接部門のKPIが機能しない理由を、成果が見えないこと・現状値がないこと・測定への抵抗という3つの構造に分解しました。
その上で、KPIを置く前に1〜2週間の工数記録で現状値を作ること、逆機能を起こすKPIの型を避けること、未達時には「やり方」か「量」かを切り分けることを解説しました。
数字は測ってから置き、置いたら運用し続けるものです。
この流れを社内で回せる体制を作ることが、間接部門のKPIを機能させる最短の道になります。