公開日 2026.11.03更新日 2026.11.03

業務棚卸のやり方7ステップ|業務一覧表の項目とテンプレート例

「退職者が出るたびに業務が止まる」

「外注を検討したが、何を任せられるのか説明できない」

こうした属人化や外注の行き詰まりの原因は、どの業務が誰の手元に月何時間ぶんあるのかを、誰も把握していないことにあります。

業務の棚卸とは、部署内の業務を洗い出し、担当・頻度・時間・月間工数までを業務一覧表に落として、現状を数値で見える状態にする作業です。

この記事では、そのやり方を7ステップで解説し、棚卸シートの10項目やコア/ノンコアなどの分類軸、よくある失敗と対策までまとめます。

棚卸後の流れは業務改善ロードマップをご覧ください。

目次

業務棚卸とは?業務可視化・業務整理・BPRとの違い

業務棚卸とは、組織の業務をすべて書き出し、担当者・頻度・所要時間・月間工数などを一覧表に整理する作業です。

読み方は「ぎょうむたなおろし」で、会計の棚卸と同じく「手元にあるものを数えて確かめる」という意味からきています。

改善策を決める前の、現状把握の工程です。

棚卸後はコア/ノンコアの仕分けやBPRに進みます。

業務棚卸・業務可視化・業務整理の違い|ほぼ同じ作業だが力点が違う

3つの言葉はほぼ同じ作業を指しますが、力点が異なります。

業務棚卸は「漏れなく数え上げて一覧にする」ことに重心があります。

業務可視化は「誰が見ても分かる形(業務一覧表・業務フロー図など)にする」こと、業務整理は「優先順位をつけて減らす・まとめる」ことです。

実務では棚卸→可視化→整理の順に進み、成果物は業務一覧表と業務フロー図の2つです。

その先に業務標準化やBPRがあります。

英語では業務棚卸をbusiness process inventoryと表記します。

中小企業では、まず業務一覧表だけを作りましょう。

業務フロー図は、問題が集中した業務にだけ後から作るのが現実的です。

BPR・業務改善との関係|棚卸は現状把握、改善はその次の工程

BPRは業務プロセスそのものを設計し直す取り組みです。

業務改善は、既存のやり方を前提に手順やツールを直す取り組みです。

どちらも現状が分からなければ設計も効果測定もできません。

そのため業務棚卸は、BPR・業務改善・DX・外部委託に共通する「第0工程」といえます。

経済産業省の「DXレポート」(2018年)も、ブラックボックス化した既存システムを残したままでは新技術の効果が限定的になると指摘しています。

同レポートは、この状態が続いた場合の経済損失を最大12兆円/年と試算しました。

業務でも同じで、棚卸を飛ばすと、効果を測る「before」の工数がないまま進むことになります。

なぜ業務棚卸が必要なのか|属人化・退職リスクとDX・外注の前提工程

理由は3つあります。

属人化による業務停止を防ぐこと、DXや外部委託で「何を・どれだけ・誰に」渡すかを決めること、工数で改善の優先順位を決めることです。

日本の時間当たり労働生産性は、OECD加盟38カ国中28位です(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」)。

リソース不足の中で成果を出すには、まず時間の使い道を数える必要があります。

属人化と退職リスク|「あの人しか分からない」が事業を止める

担当者しか手順を知らない業務は、その人が退職・休職した瞬間に止まります。

中小企業庁「2025年版 中小企業白書」は、2024年に人手不足倒産が過去最多となったことを示しています。

あわせて、2030年に約340万人の労働力不足が見込まれるという推計(リクルートワークス研究所)も紹介しています。

欠員を採用で埋められない以上、退職が決まってから引き継ぎ資料を作るやり方は通用しません。

同業界(医療・介護)の医療法人社団帰陽会(丹羽病院/11〜100人規模)では、役職者2名の退職による業務逼迫に対し、バックオフィス業務の切り出しと外注を実施した結果、内部補充なしで月310時間分の事務作業負担をカバーし、経営判断や法人運営に集中できる体制を実現しています。

参照事例:オンラインアシスタントで事務作業310時間削減、人手不足の医療現場を効率化 | キャスタービズオンラインアシスタント

業務一覧表には「判断の有無」と「引き継ぎ難易度」の列を置きましょう。

難易度の高い業務から、手順書化と複数担当化を進めておきます。

産休・育休の穴埋めや担当替えの検討にも、同じ表が使えます。

DX・IT導入・アウトソーシングは棚卸なしでは判断できない

総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、デジタル化の取り組みを実施していない日本企業は約50%、中小企業では約70%でした。

課題の最多は「人材不足」(48.7%)です。

次いで「DXの役割分担や範囲が不明確」「明確な目的・目標が定まっていない」(いずれも27.4%)が続きます。

役割分担や目的が定まらないという課題は、ツール選定ではなく業務棚卸で解決できます。

どの業務に月何時間かかっているかが分かって初めて、システム化・自動化・外部委託のどれが費用対効果に見合うかを比較できるからです。

業務棚卸のやり方7ステップ【手順・進め方】

業務棚卸は、次の7ステップで進めます。

①対象範囲の決定、②洗い出し、③粒度の統一、④時間と頻度の計測、⑤分類、⑥評価、⑦アクション決定です。

5〜10名の1部署なら、1〜1.5か月が目安です。

いきなり全社で行うと止まりやすいため、まず1部署で1周させてから横展開しましょう(業務改善ロードマップ、バックオフィス効率化の手順)。

ステップ1〜2:対象範囲を決める/業務をすべて洗い出す

ステップ1では、対象部署・期間・目的をA4用紙1枚にまとめて配ります。

目的は「残業を減らす」「退職リスクを下げる」などから1つに絞りましょう(目標設定の方法)。

目的が曖昧だと、現場は人員削減の準備と受け取り、正確な情報が出てきません。

期間は、年次業務まで拾えるよう直近1年を振り返る設定にします。

ステップ2では、担当者本人が業務を書き出します。

月次業務は月初・月中・月末に分け、年次業務は決算・年末調整などをカレンダーから逆算して拾います。

メールの送信履歴やチャットを見返すと、記憶から漏れた業務が見つかります(ムダの見つけ方)。

ステップ3〜4:粒度を統一する/時間と頻度を測って月間工数を出す

棚卸が失敗する最大の原因は、粒度のばらつきです。

「請求業務」と「請求書PDFをメールで送付する」が同じ表に並ぶと、工数の比較ができません。

業務を区切るのは、担当者が変わる、判断や承認が挟まる、成果物が変わる、のいずれかが起きるところです。

1業務は1回あたり5分〜2時間に収めるのが目安です。

ステップ4では、発生頻度と1回あたりの所要時間を記入し、「月間工数=1回あたり時間×月間発生回数」で計算します。

記憶だけで書くと、少なく申告されやすくなります。

2週間はタイムログや日報で実測して上書きしましょう。

部署合計が所定労働時間と大きくずれていれば、拾い漏れがあると判断できます。

工数は残業削減やムダ探しの基礎データにもなります。

ステップ5〜7:分類する/評価する/アクションを決める

ステップ5では、後述する3つの分類軸で全業務にタグを付けます。

ステップ6では、「ノンコア×定型×判断なし」の業務を月間工数の大きい順に並べます。

この並びが、そのまま改善の優先順位です。

ステップ7では、上位の業務ごとに「やめる・減らす・変える・任せる」のどれを取るか(改善の方法、事例)を決めます。

担当者・期限・削減見込み時間まで同じ行に書き込めば、業務棚卸表が改善計画書を兼ねます。

進捗は月1回確認し、表は半期に1回、または組織変更のタイミングで更新しましょう。

業務一覧表(業務棚卸表)に入れる10項目|Excel・スプレッドシートのテンプレート

業務棚卸表は、列が多すぎると現場が埋めきれず、少なすぎると判断に使えません。

経理・総務などバックオフィス業務の棚卸なら、最初は次の10列で十分です。

判断の有無はコア/ノンコアの仕分けにも使えます。

複数人で書き込むなら、版管理が楽なGoogleスプレッドシートがおすすめです。

棚卸シートの必須10列と記入例

  1. 業務名:「月次請求書の作成・送付」のように動詞まで書く
  2. 担当者:主担当と副担当を分ける。副担当が空欄なら属人化の候補
  3. 発生頻度:毎日/週1/月1/年1と、発生タイミング
  4. 1回あたり時間:実測値を分単位で
  5. 月間工数:④×月間発生回数
  6. 使用システム・ツール:ソフト名まで具体的に
  7. 判断の有無:判断なしの業務は自動化・外注の第一候補(ノンコア業務の目安)
  8. 引き継ぎ難易度:高・中・低とその理由
  9. 繁忙期:月末・決算期など
  10. 改善余地:「やめる・減らす・変える・任せる」の候補

記入例は次のとおりです。

業務名 担当者 頻度 1回あたり 月間工数 システム 判断 難易度 繁忙期 改善余地
月次請求書の作成・送付 経理A(副担当なし) 月1・月初3営業日 120分 2.0時間 会計ソフト+Excel なし 低 月初 任せる候補

大分類・中分類・小分類の立て方とテンプレートの選び方

分類は3階層にします。

大分類は経理・総務などバックオフィスの機能単位、中分類は請求・給与計算などの業務群、小分類は実際の作業単位です。

大分類は組織図や業務分掌規程から持ってくると、議論が短く済みます。

仕事の流れに沿って切ると、現場が迷いません。

たとえば営業なら「見込み客開拓/商談/受注処理」、経理なら「日次/月次/年次」と切ります。

無料テンプレートは、列名が自社と合わず書き直しになりがちです。

10列を自分で作り、1周回してから列を足すほうが早いでしょう。

頻度などをプルダウンで選択式にすれば、表記ゆれも防げ、業務標準化の土台になります。

業務の洗い出し方法4つ|ヒアリング・日報/タイムログ・業務日誌・ワークショップ

洗い出しの方法は、ヒアリング、タイムログ、業務日誌、ワークショップの4つです。

おすすめは、ワークショップで列挙し、業務日誌で工数を測り、ヒアリングで例外処理を補う組み合わせです。

精度と負荷のバランスに優れ、ムダの発見やバックオフィス効率化にも役立ちます。

4つの方法の使い分けと所要期間の目安

ヒアリングは1人60〜90分で、例外処理や判断基準など表に書きにくい情報を拾うのに向いています。

質問は「いつ始まるか」「1回何分か」「例外はいつ出るか」「やり直しが多いのはどこか」「不要な作業はあるか」の5問に固定すると、粒度がそろいます。

タイムログは勤怠システムや日報を集計するため、負荷がほぼありません。

反面、何に使った時間かは粗くしか分かりません。

業務日誌は2週間〜1か月、15分単位で記録する方法です。

精度は最も高いものの負荷が大きいため、対象を主要メンバーに絞りましょう。

ワークショップは付箋1枚に1業務を書いて貼り出す形式で、他人の付箋から自分の抜けに気づけます。

集めた手順は、そのままマニュアル化や業務標準化に使えます。

現場が正直に書いてくれないときの進め方

棚卸が止まる原因の多くは心理にあります。

「仕事を取り上げられる」「評価が下がる」と受け取られると、正確な申告は出てきません。

対策は次の4つです。

  1. 「人を減らすためではなく、残業と属人化を減らすため」という目的を経営者名で文書化する
  2. 結果を個人評価に使わないと明言する
  3. 管理職が先に自分の業務を公開する
  4. 削減できた時間の使い道を先に約束する

それでも情報が出ないときは、タイムログの実測に切り替えましょう。

初回は「やめる・減らす」より「任せる・変える」から着手するほうが定着します(中小企業の業務改善、人手不足の解消方法)。

棚卸した業務の分類軸3つ|コア/ノンコア・定型/非定型・判断あり/なし

分類軸は3つで足ります。

コア/ノンコアは、売上や競争力に直結するかで分けます。

定型/非定型は手順が決まっているか(定常業務との違い)、判断あり/なしは人の裁量による意思決定が必要かで分けます。

たとえば商品企画や顧客との関係構築はコア業務、データ入力や経費精算はノンコア業務です。

3軸でタグを付けると、打ち手が自動的に決まります。

分類の組み合わせ 打ち手
ノンコア×定型×判断なし 自動化・外部委託の最有力候補
ノンコア×定型×判断あり 判断基準を明文化すれば任せられる
コア×非定型×判断あり 社員が時間を使うべき領域

棚卸後のアクションは4つ|やめる・減らす・変える・任せる(ECRS)

全業務に「やめる・減らす・変える・任せる」のいずれかを割り当てます。

これは業務改善のフレームワークECRS(排除・結合・再配置・簡素化)を実務の言葉に置き換えたもので、必ずこの順番で検討します。

  • やめる:誰も読まない報告や二重入力を廃止する。コストゼロで効果が最大
  • 減らす:日次を週次にする、会議の参加者を絞るなど、回数と人数を削る
  • 変える:クラウド化、テンプレート化、RPAや生成AIによる自動化
  • 任せる:判断を伴わない定型業務を、BPOやオンラインアシスタントなど外部に移す

「まず自動化」から入ると、本来やめてよい業務を高いコストで自動化してしまいます。

業務改善アイデアも参考にしてください。

業務棚卸でよくある失敗3つと対策|粒度・棚卸で終わる・現場の抵抗

失敗1:粒度のばらつき

「経理業務(月80時間)」と「振込データのCSV出力(月10分)」が同居した表は使えません。

区切り方のルールを最初に配りましょう。

記入後に管理者が粒度をそろえる時間も確保しておきます。

失敗2:棚卸で終わる

アクションが決まらず、半年後には実態と合わない資料になるパターンです。

完了条件は「表が埋まったこと」ではなく、「上位10業務のアクションが決まったこと」に置きます。

外注時はアウトソーシングの失敗回避策も確認しましょう。

失敗3:現場の抵抗

評価への不安から、工数が過少申告されます。

目的の文書化と実測が対策です。

加えて、初回は1部署で月20〜30時間の削減という現実的な目標から始めましょう(中小企業の業務改善)。

棚卸で見えた「任せる業務」をオンラインアシスタントに移す(CASTER BIZ assistant)

「ノンコア×定型×判断なし」に分類され、採用するほどの量ではない業務は、外部のオンラインアシスタントに任せるのが近道です。

CASTER BIZ assistantは、ディレクターとアシスタントのチーム制のオンラインアシスタントサービスです。

経理・人事労務・総務・営業事務・秘書業務などを横断して引き受けます。

初期費用は0円です。

BASICプラン(30時間/月)は、12ヶ月プランで月額税抜120,000円(税込132,000円)からです。

最短3営業日で利用を開始でき、累計導入実績は6,000社以上(2025年11月時点)です。

窓口はディレクター1名のため、棚卸表の該当行を渡すだけで依頼できます。

判断を伴う業務は、棚卸表の段階で「社内に残す」と決めておきましょう。